全羅北道方面へ車を走らせると、金堤市白鴎面(ペックミョン)のあたりで、突如として地平線を埋め尽くすガラスとビニールの屋根の団地が現れる。
最初は大型物流センターかと思ったのだが、調べてみると、これがかの有名な(?)「金堤スマートファーム革新バレー実証団地」だった。
ニュースで**「スマートファーム革新バレー」**という言葉は耳にしていたが、具体的に何をする場所なのか、なぜ金堤なのか、そして今も順調に機能しているのかについては全く知らなかった。
調べてみると、単に大きな温室を建てたわけではなく、政府が長年温めてきた政策実験であり、同時にここ数年、予算や欠陥問題で騒がしかった場所でもあった。
スマートファーム革新バレー、なぜ金堤だったのか
スマートファーム革新バレーは、2018年に政府が発表した「スマートファーム拡散案」から始まった事業だ。
農業人口の減少と高齢化が加速する中、新技術であるスマートファームが個々の農家レベルで断片化されている現状を打破するため、教育・創業・実証機能を一箇所に集めた拠点を作ろうという趣旨だった。全国4地域(金堤、尚州、密陽、高興)が同時に選定され、金堤は2018年8月に用地として決定した。
その後の流れを見ると、着工が2019年12月、竣工が2021年11月であり、コロナ禍をそのまま突き抜けて建設されたことになる。総事業費は約1000億ウォン規模と言われている。これほどの予算を一つの農業インフラに投じた例は珍しく、竣工当時は**「全北版スマートファーム・ランドマーク」**という修飾語が付けられたりもした。
所在地は全羅北道金堤市白鴎面黄土路1079。金堤平野自体が非常に平坦で日照量も悪くないため、大規模施設園芸団地を設置するには悪くない条件だったと言える。ただし、これは地理的な利点だけで決まったわけではなく、セマングム隣接地という政策的な象徴性も多少作用したのではないかと思われる。この点については確かな根拠を見つけられなかったため、推測の域を出ない。
金堤スマートファーム革新バレー実証団地、何があるのか
敷地全体は約21haで、そのうち保育・賃貸・実証温室と支援センターが集まる中核施設が約9haだという。数字だけではピンとこないが、サッカー場の面積(約0.71ha)に換算すると、全体でサッカー場約30個分に相当する。温室だけでなく、創業保育センター、実証センター、ビッグデータセンターが一つの団地内に集約されているため、この程度の面積が必要だったという点は理解できる。
運営は韓国農業技術振興院(KOAT)が担っており、実務は現地の実証センターが担当している。
実証団地のパートだけを見ると、実証温室、実証装備、温室装備、モニタリングシステムで構成されており、関心のある企業や研究機関が申請して利用する仕組みだ。
毎年、上半期と下半期に分けて入居企業を募集しているが、2025年の第1次募集公告を見ると、受付はメールで行われ、担当者も実証センターの職員が直接明記されているなど、まだ規模的には発展途上の行政体系で運営されているようだ。
教育・創業・実証、3つの車輪で回る構造
革新バレーという名がついた理由は、機能が三層構造になっているからだ。
- **教育:**予備の青年農家を対象に、20ヶ月間のスマートファーム理論・実習課程を運営する。単なる講義ではなく、実際の温室で作物を育てる実習の比重が高いという。
- **創業支援:**この教育を修了した者には、3年間「賃貸型スマートファーム」を貸し出す。初期資本なしで最新施設で農業を始められるのが最大のメリットだ。
- **実証:**スマートファーム関連企業が、新技術や新製品を実際の農業環境で検証できるよう、施設と装備を貸し出す。
この3つの機能を一言でまとめると**「青年はここで農業を学び、企業はここで技術を検証する」**という構図だ。理論的にはかなり緻密に設計されている。
青年は安価に創業経験を積み、企業は実際のデータを確保し、政府はそのデータでスマートファームの国産化と輸出競争力を高めるという好循環を狙ったものと思われる。
金堤と尚州・密陽・高興は何が違うのか
同じ「革新バレー」という名前でも、金堤・尚州・密陽・高興の4箇所は、それぞれ賃貸型スマートファームの区画を分け、異なる作物の実証に集中する方式で運営されている。
例えば尚州の資料を見ると、賃貸区画の一つはイチゴ特化、残りはキュウリ、トマト、メロンなどに分けて栽培特化施設を運営するとある。
金堤は前述の通り、機能性作物の種子開発から製品化までを連携させるモデルに、より重点が置かれている印象だ。
ただ、4箇所をすべて比較すると話が長くなるため、ここでは「全国で同じ温室をコピーしたのではなく、地域ごとに実証の焦点が少しずつ異なる」という点に留めたい。
それでも金堤が特にメディアに頻繁に登場するのは、事業費規模が最大と言われていることに加え、それだけ欠陥問題も大きく取り沙汰されたからではないだろうか。
5年間の実証成果共有会、数字で見る成果は
竣工から5年目を迎え、成果を点検する場も設けられた。
2025年末に金堤・尚州の実証団地が合同で開催した「実証成果共有会」には、農林畜産食品部や両自治体の関係者、実証入居企業など約80名が集まった。これまで両団地に入居した企業は累計40社余りで、そのうち代表的な成果を上げた優秀企業が4社だったという。
スマートファームICT機器、農業用ロボット、複合環境制御器などの装備が、実際の温室環境で試験・検証されたことが発表の骨子だった。
正直なところ、この数字だけで判断するのは難しい。
5年間で40社余りというのは多いのか少ないのか、そしてこれらの企業が実証を終えた後に実際に製品の商用化や輸出に繋げられたのかは、今回の報道だけでは確認できなかった。ただし、研究(農村振興庁)-実証-検認証へと続く体系を作るという目標の方向性自体は正しいため、時間をかけて見守る必要があるだろう。
施設欠陥118件、ガラスの代わりにビニールを選んだ代償
成果の話だけでは片手落ちになるため、この点も指摘しておく必要がある。
2024年頃の報道を見ると、竣工後の3年間でこの団地に寄せられた施設欠陥は118件に達する。
特に青年農家が入居した賃貸棟での問題が深刻で、梅雨の時期には天井から雨漏りがし、遮光幕が破損する事態が繰り返されたという。自動温湿度調節設備まで故障し、人が手動で操作しなければならない時期もあったようだ。
原因を辿ると、少し呆れるような背景があった。
当初の設計では**温室の天井素材はガラスだったが、予算不足により施工段階でビニールに変更されたというのだ。**さらに、屋根が丸いアーチ型構造だったため、継ぎ目に雨水が溜まり、狭い隙間から滝のように流れ落ちるという構造的な弱点まで重なった。結局、この施設で農業を営んでいた青年たちは作物をまともに収穫できず経済的損失を被り、補償をめぐる責任の所在もなかなか整理されなかった。
1000億ウォンのランドマークと、予算不足でガラスの代わりにビニールを張った屋根――この二つの文が同じ団地を指していることが、何とも奇妙に感じられる。おそらく全体の事業費規模とは別に、詳細な施工段階での項目別予算配分が緻密ではなかったのではないかと思われるが、これについては内部事情を正確に把握できないため、推測に留める。
青年農家の定着、3年の支援が終わった後はどうなるのか
賃貸型スマートファームの支援期間が3年という点も考えさせられる。
3年といえば、初期の試行錯誤を経てようやく慣れてきた時期だが、まさにそのタイミングで支援が打ち切られる。温室の欠陥問題に悩まされた青年農家であれば、3年後に自力で施設を確保して独立する余裕があるのか、懸念されるのが現実だ。この点はスマートファーム政策全般で頻繁に指摘される部分でもあり、初期の参入障壁は下げてくれるが、その後自立まで繋がる橋をどれだけ強固に架けてあげられているのかという疑問は依然として残る。
それでは、この団地をどう見るべきか
ここまで見てきたように、金堤スマートファーム革新バレー実証団地は、成功事例とも失敗事例とも断定しにくい位置にある。
毎年220名ほどの青年を教育し、40社余りの企業の技術を検証したという実績は確かに存在するが、一方で同じ施設で118件の欠陥と青年農家の実質的な被害が発生したという事実も消えない。
「スマートファーム」という言葉が持つ「先端」のイメージと、雨漏りする天井の下で農業を営む現実との乖離が、この団地一つに凝縮されているような気がする。
結局、ハードウェアにどれだけ巨額を投じても、施工のディテールや事後管理体系が欠ければ、全体の趣旨が揺らぎかねないということをこの事例が示している。次回の実証成果共有会までに、欠陥の補修や再発防止策も成果リストに並んでいるのか、それとも相変わらず成果の数字だけが強調されているのか。それはもう少し見守る必要があるだろう。
個人的に、この団地を通り過ぎるたびに思うことがある。
あの広いガラスとビニールの屋根の下で、ある人は20ヶ月の教育を終えてようやく自分の温室を持てたという期待に胸を膨らませていたはずだし、またある人は梅雨のたびに雨漏りする天井を見上げて、その年の農業を諦めたはずだ。
同じ空間、同じ時期にこの両者が同時に存在していたという事実が、一つの政策が現実に触れた時にどれほど歪な形になるかを示しているようで、この団地の話について調べれば調べるほど、単純に喜ぶことが難しくなった。
参考文献
- https://gj.koat.or.kr/
- https://innovalley.smartfarmkorea.net/gimje/
- https://www.kamnews.co.kr/news/articleView.html?idxno=7525
- https://www.jbci.or.kr/sub/business_1_view.html?id=4897
- https://www.newsfm.kr/mobile/article.html?no=6431
- https://www.jbsori.com/news/articleView.html?idxno=14297
- https://www.foodicon.co.kr/news/articleView.html?idxno=31677
- https://www.busan.com/view/busan/view.php?code=2025120215100076482
- http://www.ikpnews.net/news/articleView.html?idxno=64833
- https://www.nabis.go.kr/termsDetailView.do?menucd=189&gbnCode=S51&eventNo=340
- https://www.mafra.go.kr/home/5281/subview.do
- https://www.gimje.go.kr/agro/
- https://www.bizinfo.go.kr/biz/bizb/selectBIZB200Detail.do?mvnEntrprsRcritPblancId=83388