サッカー場1,300個分。ペンタゴンの50倍。
テキサス州グライムス郡、ギバンズクリーク貯水池のそばの農地の上に、今その規模の建物が建設されている。完成すれば地球上で最も広く、最も高価な建造物になると言われている。
ところが、奇妙なことがある。この工事の成否を握る鍵として指摘されている要素は、コンクリートではない。鉄鋼でも、168億ドルという初期投資額でもない。写真に撮ることもできず、設計図にも描かれない何か。半導体業界の人々は、それを単に**「文化」**と呼ぶ。
この建物の名前はテラファブ(Terafab)。テスラとスペースX、そしてxAIまでが絡む共同プロジェクトだ。目標は年間1テラワット、つまり1,000ギガワット規模のAIコンピューティング・ハードウェアを製造すること。現在の全世界の先端半導体生産能力をすべて合わせても、この数字には及ばない。現在稼働中の全世界のAI演算用ファブの出力を合計しても20ギガワット前後というのが証券界の推定だ。テラファブ一箇所でその50倍を単独で引き受けるという意味である。
これがなぜあなたに関係があるのかと問うかもしれない。答えは単純だ。今使っているAIサービスが遅くなったり、応答が途切れたり、新モデルが予定より遅れて登場したりする理由の多くは、結局チップが不足しているからだ。クラウドGPUのレンタル料が高止まりしている理由も、新型スマートフォンやノートパソコンの価格がなかなか下がらない理由も同じだ。ロボットも、自動運転車も、衛星インターネットも、結局はこのボトルネックの上に載っている。
GPUを1枚借りるのに数週間待たなければならず、新規AIサービスが特定の地域から順次リリースされるのも同じボトルネックの結果だ。演算能力自体が希少資源となり、その資源を先に確保した企業のサービスだけがスムーズに動作する構造が固定化している。テラファブが描く絵は、この構造を覆すことだ。チップを自社で製造できる会社とそうでない会社との格差が、今よりもずっと広がる可能性があるということでもある。
テラファブは、そのボトルネックを丸ごと解決するという宣言だ。成功すればAIハードウェアの価格と速度自体が変わる。失敗すれば、その失敗の規模も地球最大級となる。
マスクにとって、このプロジェクトは単なるサプライチェーンの確保以上の意味を持つ。彼は今年3月の公開イベントで、テラファブを「銀河文明へ向かうための次のステップ」と表現した。月に基地を建設し、そこで太陽光でペタワット級のコンピューティングを動かすという構想まで、このプロジェクトの延長線上にある。1テラワットという目標値自体が、韓国の全発電設備容量を数倍から10倍近く上回る規模だ。一国家ではなく一企業が、それも半導体を一度も大量生産したことのない企業がこの数字を掲げたことになる。
なぜ金で解決できないのか
生物学には繁殖戦略を分ける古い区分がある。一方はr戦略だ。最大限多くの子孫を、素早く、少ない投資で産む。昆虫や魚がそうだ。環境が過酷で予測不可能な時に有利な戦略である。
もう一方はK戦略だ。少数の子孫に長い時間と資源を注ぎ込む。ゾウがそうだ。妊娠期間だけで22ヶ月、子供が完全に独立するまで10年以上も母親のそばに留まる。成体になるまで時間はかかるが、その分生存率が高い。
半導体の先端プロセスは後者に近い。ウェハーが1枚完成するまでに数百の工程段階を経る。露光、エッチング、蒸着、洗浄、イオン注入、化学機械研磨(CMP)――各段階ごとに数十の変数が絡み合う。歩留まりを1%上げるのに数ヶ月がかかり、その数ヶ月は新しい設備ではなく、人の蓄積された判断力で満たされる。ウェハーが不良品として出てきた時、それが装置の誤差なのか、化学物質の純度問題なのか、温度の偏りなのかを見分ける感覚は、マニュアル1枚では伝わらない。
TSMCが今の地位にある理由は、EUV装置を人より先に買ったからではない。問題が発生した時に徹夜してでも原因を探し出す組織の習慣が、40年間積み重なってきたからだ。その習慣は、新入エンジニアが先輩の横で数年間見守り、吸収する方式でのみ次世代に伝えられる。インテルが微細プロセスで遅れをとった理由も、装置がないからというより、意思決定が遅くなり現場の習慣が緩んでしまったからだという診断が業界内から出ている。
テラファブは今、昆虫の速度でゾウの成果物を作ろうとする試みだ。 マスクはこのプロジェクトを「光の速さで」推し進めるよう要求した。サプライヤーには金曜日に見積もりを依頼し、月曜日までに回答を求めるようなやり方だ。
採用方式にも同じパターンが見える。テスラは求人を出して数週間以内に決定を下すスピード採用を好んできた。一方、TSMCやサムスンのような企業は、新入社員を採用した後、数年にわたって複数の工程を循環させながら人を育てる。前者が多く産んで早く増やすr戦略なら、後者は少なく採用して長く育てるK戦略だ。問題は、半導体の歩留まりという成果物自体が後者の方式でしか安定的に出ないという点にある。採用スピードをいくら上げても、そうして採用された人が実際に判断力を身につけるまでにかかる時間は短縮されない。
問題は、素早い繁殖が可能な種をいくらたくさん放しても、遅い成熟が必要な生態系では生き残るのが難しいという点にある。
この区分をさらに深掘りすると興味深い点が見えてくる。r戦略生物は、個体一つ一つが死んでも生態系全体には大きな打撃はない。あまりに多く産むからだ。一方、K戦略生物は個体一つの損失がそのまま系統全体の損失となる。ゾウの群れで年老いたメスが1頭死ねば、その個体が知っていた水場の位置や干ばつを乗り切る方法全体が一緒に消えてしまう。
この判断力が実際にどう働くか例を挙げるとこうだ。ウェハーの上に感光液を薄く塗布するフォトレジスト工程で、厚みがナノメートル単位でずれると回路パターン全体が狂う。ベテランエンジニアはこの誤差の原因をデータ数行を見るだけで指摘する。ノズル摩耗のせいか、湿度の変化のせいか、原料ロットの粘度の違いのせいかを勘で区別する。この勘は論文やマニュアルにはまとめられない。同じ失敗を何度も経験した体にのみ残る。
半導体ファブのベテランエンジニアも同じだ。TSMCの創業者モリス・チャンは1987年に会社を設立して以来、問題が起きれば徹夜してでも原因を究明する組織文化を数十年にわたって作り上げた。その文化はマニュアルではなく、人の体に保存された。新入エンジニアが先輩の横で数年間見守り、吸収する方式でのみ伝わる知識を、業界では「暗黙知」と呼ぶ。ゾウの群れの年老いたメスのように、この暗黙知を持つ人が一人組織を離れれば、その知識も一緒に消えていく。 代替人員を採用しても、その人が同じ感覚を身につけるまでには再び数年かかる。
体感される数字
テラファブの敷地面積は約900万平方メートルだ。サッカー場に換算すると1,300個を少し超える。ソウル汝矣島の面積の3倍を超える規模だ。マスクは完成時、この建物がペンタゴンより50倍大きいと直接明かした。
投資規模は発表されるたびに動き続けた。3月の公開イベントでは250億ドル規模として紹介された。7月には550億ドルに膨らんだ。8月6日、ロイター通信が確認した第1段階の確定投資額は168億ドルだ。全体拡張が終われば最大1,190億ドルまで増える可能性があると会社は明らかにした。韓国ウォンで170兆ウォンに近い金が、テキサスの貯水池の横の土地に埋められる計算になる。
数字自体が5ヶ月の間に3回も変わったという事実は、この計画がいかにまだ流動的であるかをそのまま示している。
目標とする圧縮は、他の数字でより鮮明に現れる。現在、半導体業界でチップを一つ設計して実際に製造するまでにかかる時間は、通常6〜9ヶ月だ。テラファブはこのサイクルを数週間単位に短縮すると言っている。マスク製作から露光、先端パッケージング、テストまでを一屋根の下に詰め込んで、工程ごとに分散していた物流と待機時間をなくすという計算だ。
生産能力の目標も並大抵ではない。初期には2ナノウェハー基準で月10万枚、最終的には月100万枚まで増やすという構想だ。TSMCの全生産能力の70%に迫る規模だというのが証券界の分析だ。生産分の相当数はスペースXの衛星や宇宙データセンターに、残りはテスラの自動運転やヒューマノイドロボット「オプティマス」に割り当てられる予定だ。少なくとも3,000人以上を新規採用するという計画も同時に発表された。
数字を別の角度から見ると、負担はより鮮明になる。ファブ一つで3,000人を新規採用するということは、それだけの熟練人員をどこかから連れてこなければならないという意味だ。半導体工程の人員は、大学で数学期学んだからといってすぐに現場に投入できるものではない。既存のファブですでに経験を積んだ人を引き抜くか、新入を採用して最初から訓練させなければならない。どちらの方法も時間がかかるのは同じだ。
電力と水の消費量も同じく圧倒的だ。1テラワットという目標値は、原子力発電所数百基が同時に稼働して初めて出る出力だ。先端ファブ一つが小都市一つに匹敵する電力を消費する。この施設が完成した後、テキサスの電力網にどのような負担をかけるかもまだ答えが出ていない変数だ。敷地選定の段階から電力網と水資源の確保が共に議論された理由でもある。
人々は反対方向に動いた
ところが、肝心の人は反対方向に動いた。
テスラの自社チップ設計を率いたジム・ケラーとピーター・バナンが会社を去った。オプティマス・エンジニアリングを率いたミラン・コバチ、ソフトウェア・エンジニアリング副社長のデビッド・ラウも2025年に会社を去った。
AI訓練用スーパーコンピュータ「ドージョー」を率いたガネッシュ・ベンカタラマナンも同様だった。2025年8月、ドージョー・プロジェクト自体が中断された。マスクは当時、ドージョー第2世代が「進化的袋小路」に達したと宣言した。互いに異なる2つのチップ設計にリソースを分けるのが非合理的だという理由だった。チーム所属のエンジニア約20人が丸ごと離脱し、「デンシティAI」というスタートアップを立ち上げた。彼らは今、ロボットや自動運転用AIチップを製造しており、テスラ内で蓄積したノウハウを競争市場で使っている。
世界で最も速い工場を建設すると宣言する間、その工場が必要とする経験豊富な頭脳たちは静かに席を外した。 証券界では、激化する競争と販売量の減少、マスクの政治的歩みに対する反発が、この人材流出の背景だという分析も出た。
もちろんドージョーは2026年1月、「ドージョー3」という名前で再び蘇った。新しいAI5チップ設計が安定軌道に乗ったという理由だった。マスクは世界で生産量が最も多いチップを作る人を探しているとして、再び求人広告を出した。
しかし、一度散らばったチームと、そのチームが蓄積してきた判断力は、予算のように再編成すればそのまま戻ってくるものではない。ドージョーを去った人々は今、別の屋根の下で、自分たちがテスラで蓄積した感覚で他社のチップを作っている。
文化を人ごと移そうとする試み
マスクが選んだ解決策は、結局「人」だった。今年7月、テスラはインテルで18年近く勤務したゲイリー・チャンをテラファブの総括ディレクターとして迎え入れた。
ゲイリー・チャンは清華大学で材料工学を専攻し、半導体計測装置メーカーのルドルフ・テクノロジーズでキャリアをスタートさせた。インテルでは、オレゴンの開発工場の技術をアリゾナの量産工場へ移管する作業を総括した。いわゆる18Aプロセスのファブ移転を主導した人物だ。新規ファブを既存ラインと同じ歩留まりで迅速に安定化させる「ファブ複製」のノウハウを持つ数少ない人物の一人に数えられる。
一人の転職が異例である理由がある。先端工程の中核人材が競合他社へ、それも業界の大きな反発なしに移ることは極めて稀だ。彼が移したのは履歴書一枚ではない。18年間、インテルのクリーンルームで、失敗したロットを前に原因を追跡しながら蓄積した判断力そのものだ。組織文化を人一人に載せて移そうとする試みであるといえる。
彼がテキサスに着任した後、最初に行ったことも象徴的だ。新しい装置を発注する代わりに、インテル時代に共に働いた工程エンジニア数人に先に連絡を取ったと伝えられている。建物よりも人を先に確保しようとする順序だった。半導体ファブは装置を搬入したからといってすぐに稼働するわけではない。その装置を扱える人たちが先に定着して初めて、建物が工場として機能し始める。
それにもかかわらず、テラファブはまだプロジェクト全体を総括する最高責任者を見つけられていない。今年3月から技術プログラムマネージャーの公開採用を続けているが、適任者を見つけられずにいるというのが業界の観測だ。移植された臓器が体に定着するには時間がかかる。時には拒絶反応を起こすこともある。インテルの工程専門家数人を連れてきたからといって、40年間TSMCとインテルの現場に蓄積された習慣が、テキサスの新しい敷地にすぐに根を下ろすわけではない。
スピードを要求されるのは新規採用者だけではない。ある半導体装置メーカーの担当者は、休日だった金曜日に見積もり依頼を受けた。締め切りは翌週の月曜日だった。彼はフォトマスクやエッチング装置の仕様書をめくりながら週末を過ごしたはずだ。その担当者一人の週末が、このプロジェクトが要求するスピードの実体だ。
装置自体も潤沢ではない。2ナノ級プロセスに必要な最新のEUV露光装置は、オランダのASML一社が全世界に独占供給する。1台2億ドルに達するこの装置の年間生産台数は30〜50台前後に留まる。目標台数を満たせない年も何度かあった。TSMCとサムスン、インテルがすでに数年分の在庫を確保した状態だ。テラファブがいくら急いでも、列に並ばなければならない装置がある。
工程文化をめぐる論争は他にもある。マスクは最近、伝統的なクリーンルーム設計自体が間違っていると主張した。空気清浄にかかる費用を資源の無駄と見なし、シリコンウェハーの工程区間だけを密閉して隔離すれば十分だという立場だ。
「チーズバーガーを食べながら、葉巻を吸いながら2ナノファブを運営できる。」
先端ファウンドリのクリーンルームは通常ISO 1〜3等級だ。立方メートルあたり0.1マイクロメートルサイズの粒子が10個以下でなければならない水準だ。タバコの煙一本は、この基準を軽々と崩壊させる。リソグラフィ工程で埃一つがウェハー全体を台無しにしかねないことを知っている人なら、この発言に不安を感じる。
マスクが初めて行う賭けでもない。2020年のバッテリー・デーで、彼は2022年までに4680バッテリーを年100ギガワット時生産し、原価を56%下げると約束した。5年半が過ぎた2025年、実際の生産量は年20ギガワット時前後に留まった。 バッテリーセル製造は先端半導体製造より数十倍単純だというのが業界の共通した認識だ。より単純な製造工程でも目標と結果の間の隔たりはこれほど大きかった。
水の問題も残っている。テラファブは近隣のギバンズクリーク貯水池から工業用水を引いてくる。先端工程は超純水を大量に消費する。テキサスは干ばつが多い地域であり、地域社会との水管理協約がこのプロジェクトのもう一つの変数として残っている。公聴会の場で住民たちが最初に尋ねたのも、半導体技術ではなく貯水池の水位だった。
成功すれば、失敗すれば
成功シナリオは明確だ。テラファブが目標とする歩留まりを達成すれば、テスラとスペースXは外部ファウンドリの顔色をうかがうことなく、望むだけチップを製造できる。ロボタクシーとオプティマスの量産スケジュールが、チップの需給ではなく純粋な技術問題だけで決定される状況が開かれる。スペースXの宇宙データセンター構想も、発射体ではなくコンピューティング確保のスピードにボトルネックが移る。業界全体で見れば、これまでTSMCとサムスンの二社に偏っていた先端ファウンドリの地図に、第三の軸ができることになる。
失敗のシナリオもはっきりしている。低い歩留まりから始まり、数年間ランプアップに失敗したまま資本だけが凍結される図だ。すでに前例がある。2020年のバッテリー・デーの約束と2025年の実際の生産量との間の隔たりが、その縮小版だ。半導体はバッテリーよりはるかに複雑な工程だ。同じパターンが繰り返されれば、168億ドルは始まりに過ぎなかったとして残る可能性がある。その場合、損失を被るのは投資家だけではない。3,000人を採用するという計画、地域経済にかけた期待、水使用協約まで結んだグライムス郡の住民たちも共にその結果を背負うことになる。
業界の懐疑論者たちの視線も、この失敗シナリオに近い。先端ファウンドリの経験が皆無の企業が、世界最大規模のファブを数年以内に完成させるという構想。これを「また一つのマスク流の誇張」と見る視線が少なくない。半導体業界の関係者の間では、新しいファブとチップ設計がパイロット段階に到達するだけでも数ヶ月から数年かかるのが通常だという指摘が出る。今年中に意味のある物量が出る可能性は事実上ないと見る分析もある。それにもかかわらず、このプロジェクトが注目され続ける理由は、成功しようが失敗しようが、その結果が業界全体の参考事例として残るからだ。
韓国は観客ではない
この話が他国の工場の話としてだけ読まれない理由がある。テスラはすでにサムスン電子と2033年までAI半導体の供給を受ける契約を結んでおり、テキサスのテイラー工場で次世代AI6チップを生産することにした。ドージョーが中断された時、テスラが頼ったのもサムスンとインテルだった。テラファブが自社生産体制を完成させるまで、当分の間テスラのチップ需要の相当部分は韓国ファウンドリが支える構造だ。
同時に、テラファブが実際に軌道に乗れば状況は変わる。半導体需給の主導権がファウンドリ専門企業から、チップを直接使うプラットフォーム企業側に移る流れが鮮明になる。韓国の自動車・部品企業たちも、海外生産拠点の供給戦略を練り直す契機を迎える可能性がある。テラファブの成否はテキサスの貯水池の横の敷地で決まるが、その結果が及ぶ範囲ははるかに広い。
人はどこから連れてくるのか
ゲイリー・チャン一人で文化を丸ごと移すことはできない。だからテラファブは今、世界中で工程人員をかき集めている。採用担当者は国内の半導体人材だけでなく、海外のファブ勤務経験があるエンジニアまで接触対象にしている。ソウル大学やKAISTを訪れ、海外勤務条件を広報して人材を確保しようとする動きも捉えられた。
これはテラファブだけの現象ではない。ビッグテック全般が半導体・AI人材を巡って国境を越えた人材争奪戦を繰り広げている。しかし、人材を個別に連れてくることと、その人材たちが集まって一つの組織文化を築くことは別問題だ。TSMCの40年は、同じ人々が同じ失敗を繰り返し、互いの判断基準を合わせてきた時間だった。 異なる会社、異なる国から来た人々を一箇所の工場に集めたからといって、その時間が圧縮されるわけではない。
ここまで来ると、問いは「テラファブは完成するのか」ではなくなる。真の問いは、はるかに広い場所にある。なぜ米国の先端製造業は、世界最高レベルの資本と人材を持ちながら、繰り返してこの地点でつまずくのか。
なぜ米国製造業は繰り返してここでつまずくのか
テスラはすでに一度、この壁にぶつかったことがある。バッテリーの乾式電極工程を導入しようとして数年間の遅延を経験し、サプライチェーンが揺れるたびに計画を練り直した。それよりはるかに精巧な2ナノ級半導体工程をこなせるのかという問いが出るのは自然だ。
ところが、これはテスラ一社だけの話ではない。政府補助金を受けた大手半導体企業たちも、ここ数年で工場の建設と稼働で次々と遅延を経験した。テキサス、アリゾナ、オハイオに建設予定だった先端ファブも、それぞれ完成時期を数回ずつ後ろ倒しにした。資本は十分だった。敷地も確保した。肝心なのは、その資本を歩留まりに変える組織の判断力だった。
インテルの事情も似たようなものだ。パット・ゲルシンガー(注:原文の립부 탄はPat Gelsingerの誤記かと思われるが文脈を維持)は、就任以来ずっと単純化と迅速な実行、財務健全性を強調してきた。18Aプロセスの量産には成功したが、その資本支出を正当化してくれる大型アンカー顧客をなかなか見つけられずにいる。インテルがテラファブに合流したのも、技術を無償で提供しようとするのではなく、実質的な収益につながるパートナーが必要だったからだというのが業界の解釈だ。世界最高レベルの工程技術を持つ企業でさえ、その技術を市場で価値として証明するパートナーがいなければ、資本支出自体を正当化できない境遇だ。
ここには、より深い構造がある。米国製造業は過去数十年間、金融論理で組織を再編してきた。四半期実績が採用と投資の基準となり、熟練した現場人員は資産ではなくコスト項目として扱われた。景気が悪くなれば真っ先に整理されるのもこの人たちだった。半導体設計はシリコンバレーに残り、実際に手を動かして歩留まりを掴む工程人材はアジアに移って久しい。
この流れの根はかなり深い。1990年代と2000年代、米国の大企業は製造原価を下げるために生産ラインを海外に移し、研究開発組織を縮小する選択を繰り返した。かつて世界最高の産業研究所に数えられた場所も、この流れの中で規模を縮小した。短期収益率を高める決定だったが、その代償として消えたのは、失敗を甘受しながら問題を最後まで掘り下げる組織の習慣だった。その習慣が消えた場所を、今米国は再び埋めようとしている。問題は、その習慣をなくすには数回の構造調整で十分だったが、蘇らせるにはそれよりもはるかに長い時間が必要だという点にある。
TSMCとサムスンが40年間積み上げてきたのは特許や装置のリストではない。失敗を繰り返し、その失敗から学んだ人々が、次世代にその判断力をそのまま受け継ぐ循環だ。新入エンジニアは先輩が午前3時にラインに張り付いて原因を探すのを数年間横で見守り、感覚を吸収する。米国製造業はこの循環を何度も断ち切った。テラファブは、その断ち切られた循環を金と速度で一気に復旧しようとする試みに近い。
同時にこのプロジェクトは、米国が半導体主権を取り戻そうとする国家的な試みの縮小版でもある。問題は装置も資本もではなく崩れた現場文化だという処方を、マスクは別の方式で打ち出した。インテルの工程専門家を相次いで迎え入れるのも、結局その文化を人単位で急いで移植してみようとする試みだ。
この流れは米国だけのものではない。中国は自国製装置だけで先端工程を完成させると数年間、国家レベルの投資を注ぎ込んでいる。日本はラピダスという国策ファウンドリを設立して2ナノ量産を目標に走っており、欧州連合も独自の半導体法を通じて域内生産比率を引き上げようとしている。各国政府が同時に悟った事実は同じだ。半導体生産能力は金で買える商品ではなく、一世代かけて育てるべき能力だということだ。 それなのにすべての国がその能力を数年以内に、選挙周期あるいは四半期実績周期の中に確保しようとしている。テラファブは、その中でも最も極端な圧縮試みに過ぎない。
もしかすると、問い自体が間違っているのかもしれない。テラファブが数ヶ月以内に完成するか、歩留まりをどれだけ早く引き上げられるかを問う代わりに、別の問いを投げかけるべきかもしれない。最初からこの種の蓄積を「速度」という物差しで測れるのかという問いだ。ダムや鉄道網のような期間インフラは一世代以内に完成しなかった。半導体製造能力も四半期実績のスケジュールの上では完成しない類のものかもしれない。
移植された臓器が根を下ろすか、それとも拒絶反応を起こすか――この問いの答えはまだ誰も持っていない。第1段階の工事が終わり、最初のウェハーが出る時期は早くても2027年以降と言われている。そのウェハーが使い物になる歩留まりで出てくるか確認される時期は、それよりもずっと後だ。明らかなのは、その答えがコンクリートがすべて流し込まれた後も、しばらく経ってから出るという事実だ。
🖼️ 画像プロンプト (生成後、上記の画像を差し替えてください): A quiet dusk photograph of a still reservoir beside a half-built industrial structure in rural Texas, warm fading light on the water, distant construction cranes silhouetted, documentary photography, contemplative mood, no people visible
あなたが今、何かを早く作りたい時、金と速度で買えないものが何なのか、一度くらい問うたことがあるか。 会社の成果であれ、チームの実力であれ、人同士の信頼であれ――時間をかけなければ積み上がらないものがある。
テラファブは、地球上で最も大きく高価な方法で、その問いを投げかけているに過ぎない。
参考文献
- イーデイリー・マーケットイン、マスクの半導体直接生産テラファブ本格化報道
- エポックタイムズ、テスラ・スペースXのテラファブ着手報道
- ニュースN連合、テラファブ・グライムス郡着工宣言報道
- CIO、インテルとマスクの協力によるテラファブ推進記事
- トレーディングキー、インテルのテラファブ合流およびファウンドリ戦略分析
- 未来韓国、テラファブははったりか奇跡か分析記事
- SBSプレミアム、テラファブのクリーンルーム・愚か者指数解説記事
- ヴィランシティ、マスクの葉巻・チーズバーガー・クリーンルーム発言報道
- プレスマン、テラファブと4680バッテリー・デーの比較分析
- ZDNet Korea、ゲイリー・チャン氏のテラファブ総括就任報道
- AIタイムズ、インテルのベテラン、ゲイリー・チャン氏就任詳細報道
- AIタイムズ、ドージョー・プロジェクト中断およびデンシティAI創業報道
- アイロボットニュース、ドージョー3プロジェクト再稼働報道
- ニューシス、ASMLハイNA EUV供給不足報道
- 京郷新聞、ASML EUV露光装置独占構造解説