ウォン/ドル為替レートが1500ウォン台を行き来するニュースを見ていたところ、コメント欄でやたらと「日本のバンクラン」という言葉が目についた。最初は単なるネット上の怪談だと思っていた。ところが調べてみると、「円のバンクラン」という表現は実際にかなり頻繁に検索されており、根拠として引用されている数字も事実だった。日本銀行の国債評価損45兆円、生命保険会社の損失15兆円といったものである。問題は、これらの数字が何を意味するのか、そしてそれが本当に「銀行の窓口に行列ができる」という状況につながるのかを、誰もまともに説明していないということだった。そこで、数日間かけて詳しく掘り下げてみた。
円安はなぜここまで進んだのか
まずは背景から整理する必要があるだろう。円/ドル為替レートは8月末基準で1ドル=159円台で推移している。かつて旅行者の間で「円安だから日本に行こう」と消費されていた時期もあったが、最近の議論は少し毛色が違う。貿易赤字の拡大、日米金利差、そして最近では財政懸念まで重なり、2026年末には円/ドルレートが165円まで下落するリスクも残っているという分析が出ている。興味深いのは、これが単に日本だけの問題ではないという点だ。ウォンと円の相関係数が2025年下半期に0.94まで急騰したという分析もあった。グローバル投資家が韓国と日本を別々の市場ではなく、一つの「アジア資産クラス」として括って見ているということだ。円安がウォン安にそのまま波及する構造である以上、他国の話として片付けることはできない。
ここにさらに、ウォン/ドルレートが7月1日に1559.2ウォンまで上昇し、2009年の世界金融危機以降で最高値を記録したことや、第2四半期の平均為替レートが1500ウォンを超えたのが1998年の通貨危機以来、28年3ヶ月ぶりという記録も出ている。米国が今年6月、韓国を含む9カ国を為替監視対象国に指定したのも同じ文脈で読める。つまり今起きているのは円単体の問題ではなく、アジア通貨全般が揺れ動く局面であることを複数の指標が示しているといえる。
日本銀行はこの流れを抑えようと利上げを進めている。市場では9月の会合で25bp(ベーシスポイント)の追加利上げが行われる確率を約87%と見込んでいる。7月の会合前までは23%程度だったことを考えると、かなり急激に変化したといえる。だが、ここから話が少しこじれてくる。利上げをすれば通貨は防衛されるが、同時に別の問題が大きくなるからだ。
日本の国債、なぜ皆が損失を抱えているのか
金利が上がれば債券価格は下がる。これは基本原理だが、問題は日本がこの数十年間、超低金利時代に国債を膨大に買い込んできた点にある。まずは日本銀行を見てみよう。2025年度決算ベースで、日本銀行が保有する国債の評価損は45兆4414億円に達した。前年より17兆円ほど増えた過去最大規模だ。市中銀行も事情は似ている。2025年第4四半期に日本の主要銀行が保有する国債だけで7兆円、約45億ドル規模の評価損が発生しており、ゆうちょ銀行と三菱UFJの損失増加幅が最も大きかった。生命保険会社側も同様だ。日本の大手生保4社が2026年6月末時点で国内債券において15兆1300億円、約960億ドルの評価損を抱えていたという集計もある。
地方銀行はより目立つ。日本の地方銀行の含み損は9月末の会計四半期時点で21億3000万ドル規模まで拡大したが、これは日本銀行が2024年3月に初めて利上げを行って以来、260%増加した数値だという。実際に個別の事例も出ている。群馬県を拠点とする東和銀行は、国債・地方債の評価損を一括償却したことで、上場地方銀行73グループの中で唯一、純損失を記録した。数字だけ見れば確かに尋常ではない。だが、ここで一つ指摘しておきたいことがある。これらの損失が「評価損」という言葉の中に閉じ込められているという点だ。実際に銀行の窓口から現金が流出するのとは別の話であり、この違いがバンクラン論の核心を分ける。
なぜSVBとは違うのか — 日本の銀行でバンクランが起きる真の条件
2023年の米シリコンバレー銀行(SVB)破綻を覚えている人なら、この損失規模を見てデジャヴを感じるかもしれない。SVBも金利上昇期に保有国債の価格が下落して崩壊したからだ。しかし、日本の金融当局はこの比較を断固として否定している。金融庁の幹部は、海外メディアが日本の地方銀行をSVB破綻と結びつけることについて、両者は全く異なると強調した。根拠は二つに分かれる。
第一は預金基盤だ。SVBはシリコンバレーのスタートアップやベンチャーキャピタル資金が集中した構造だった。預金者数名が引き出しを決めれば、一日で預金の大部分が消えかねない、極端に偏った構造だったということだ。一方、日本の地方銀行の預金基盤は大部分が家計によるものだ。一つの地域で数十年間給与口座として使い続けている人々が、SNSの噂一つで一斉に引き出しに走る可能性は、ゼロとは言い切れないが相対的に低い。
第二は会計処理方式だ。これは技術的だが、より重要なポイントだ。債券を「満期保有目的(HTM)」として分類すれば、時価評価損を財務諸表に直ちに反映する義務はない。実際に「売却可能証券(AFS)」に分類された国債のみが評価損の実現リスクにさらされる。りそな銀行の場合、売却可能証券に分類された国債の評価損が四半期純利益予想の41%に達したが、同時に保有株式から発生した評価益が6920億円に達しており、純増ベースでは依然として利益が出る可能性が高いという分析が出た。三菱UFJ、みずほ、三井住友のようなメガバンクは、国債評価損が利益予想の9%未満と相対的に小さいという評価もある。
つまり、損失が「ある」ことと、その損失が「銀行を倒産させるほど脅威的である」ことは別の話だ。金融庁は、地方銀行がこうした損失を考慮しても十分な資本バッファを持っていると評価しており、規制体系を直ちに見直す必要はないと線を引いた。ただし一つ条件がある。金利が今よりもはるかに急激に、予想よりも速く上昇するシナリオになれば話は変わるという注釈だ。
引き出し騒動よりも恐ろしいのはこの流れだ
では、日本発の金融不安は完全に無視していいのかというと、そうではない。個人的に取材を進めるうちに、真のリスクは「預金者が行列を作る」という絵ではなく、別の経路から来るという確信を抱いた。まさに円キャリートレードの解消だ。
円キャリートレードとは、金利の低い円を借りて、金利の高い他国の資産に投資する戦略だ。数十年間超低金利だった日本の円は、世界中の投資家にとって「タダに近い調達資金」としての役割を果たしてきた。しかし、日本銀行が利上げを始めると、この計算が崩れる。円で借りた金の利子負担が増え、同時に円高によって為替差損リスクまで重なるからだ。すると投資家は急いで円を買い戻して借金を返し、その過程で保有していた海外資産を売り払う。
これが理論で終わらないところが恐ろしい点だ。2024年8月、日本銀行が利上げを行うと、一週間も経たないうちに日経平均株価が一日で12.4%急落し、韓国のKOSPIも8.77%下落した。そしてこれは一過性の事件でもなかった。2025年12月、植田和男総裁が利上げを予告すると日経平均は一日で1.89%下落し、ニューヨーク市場でもダウ平均が0.9%下落するなど、リスク回避心理が広がった。幸いこの時は総裁が事前にシグナルを出していたおかげで市場がある程度消化しており、実際に基準金利を0.5%から0.75%に引き上げた12月19日の発表当日は、市場の反応は比較的冷静だった。予告と奇襲の差はこれほど大きい。
問題は、このパターンが繰り返されていることだ。6月にも日本銀行の追加利上げの可能性が浮上すると円キャリー解消の懸念が再び頭をもたげ、これが外国人投資家のリバランス需要と重なり、ウォン/ドル為替レートが通貨危機以来初めて1560ウォン台を突破したという報道があった。まとめると、バンクランのように「銀行一つが倒産する」という局所的な事件ではなく、利上げ発表一つが世界中に張り巡らされた円建て貸出資金を一気に揺さぶる、はるかに広範囲で反復的なリスクだということだ。個人的には、こちらの方がバンクランのシナリオよりも、実際に頻繁かつ迅速に現実化するリスクだと見ている。
日本の国債市場を支えているのは結局、日本銀行自身だ
さらに掘り下げてみると、日本の国債市場がこれまで表立って大きく揺れなかった理由が別にあることがわかった。市場が自律的に安定を取り戻したのではなく、日本銀行が買い支えることで金利を抑え込んできたのだ。国債金利が急騰してグローバル金融市場が緊張した5月の状況について、原油価格上昇によるインフレ懸念と日本政府の財政負担拡大の可能性が重なり、投資家が長期国債を大量売却したことで、この余波が米国債市場にまで波及しかねないという警告も出ていた。ところが興味深いことに、この不安が金融危機につながる可能性は限定的だという評価が同時に優勢だった。ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントのあるシニアストラテジストは、日本は依然として国内勢を中心に国債を消化しているため、グローバルな金融システムリスクというよりは、漸進的な金利再評価のプロセスと見るのが妥当だと指摘した。
国内勢中心の消化構造ということが核心のようだ。海外投資家が売って出て行けばそのまま市場が崩れる構造ではなく、日本国内の機関・家計資金が相当部分を吸収するという意味だからだ。ただ、これを楽観視だけはできないという視点もある。ブルッキングス研究所のあるシニア研究員は、国債市場で危機が目立たない理由そのものが、日本銀行が膨大な量の債券を買い入れて金利急騰を無理やり抑え込んでいるからだと指摘した。市場が債務危機の見通しをできていないのではなく、金利の代わりに円の価値を下げる方法でそのリスクを反映しているだけだという話だ。政府が緊縮を宣言し、債務を減らすまで円安は止まらないという警告も添えられた。
この二つの視点は互いに完全に矛盾するわけではない。短期的に急激な崩壊が来る可能性は低いが、その安定が「市場が健全だから」ではなく「日本銀行が支え続けているから」であるという点には概ね同意が得られる雰囲気だ。支える手を離す瞬間、つまり日本銀行が緊縮のスピードをさらに高めるか、保有国債を実際に売却し始める瞬間が真の試練になるだろう。
預金は安全網なしに放置されているわけではない
バンクランの話をする際、しばしば抜け落ちるのが預金者保護制度だ。これは案外重要な部分だと思うが、日本にも韓国の預金保険公社のようなセーフティネットがある。日本は金融機関1社につき元本1000万円まで預金を保護し、さらに利息がつかない決済性預金は上限なく全額保護する。韓国は2025年9月1日から保護上限を5000万ウォンから1億ウォンへ24年ぶりに引き上げたが、奇しくもこの記事を書いている時点とちょうど重なる。いずれにせよ要点は、預金者が「この銀行が潰れたら私の金が丸ごと消える」と感じる根拠がそもそも弱いということだ。
もちろん保護上限を超える多額の預金を持つ法人や高額資産家なら話は別かもしれない。そして制度があるからといってパニックが根源的に遮断されるわけでもない。2023年のSVB事態の際も米国には連邦預金保険公社(FDIC)がしっかり存在していたが、保護上限(25万ドル)をはるかに超える預け金を持つスタートアップが一斉に動いたことで、3日で銀行が破綻した。したがって安全網の存在そのものよりも、その安全網が実際の預金構造とどれだけ適合しているかが鍵となる。前述の通り、日本の地方銀行の預金基盤は家計中心なのでSVB的な偏りとは距離があり、ここに保護制度まで加われば「取り付け騒動」シナリオの蓋然性はさらに低くなると見るべきだろう。
SVBと日本の銀行、何が違うのか一目で
言葉で説明すると長くなるので、SVB事態と今の日本の状況を並べて整理してみた。表にしようかとも思ったが、三つの軸(預金基盤、会計処理、当局判断)が互いに絡み合っているため、インフォグラフィックで見る方が直感的だった。
1997年と今、同じ単語で異なる絵
「バンクラン」という単語が韓国で特に重く感じられる理由がある。1997年の通貨危機当時の記憶があるからだ。当時は銀行閉鎖が遅れることで不安が雪だるま式に膨れ上がり、そのトラウマが今でも「危機」といえば反射的に浮かぶイメージを作り上げている。実際に最近出たあるコラムは、2026年の状況を置いてSVB崩壊と1997年のIMF危機の教訓を並べ、ウォン安が為替レート1500ウォン台突破に直結する可能性を指摘した。韓国銀行が金融安定を強調して先制的に対応すべきだという主張も共にある。
だが、ここで指摘したいのは、1997年の危機と今議論されている「日本発リスク」は発生経路そのものが異なるという点だ。1997年のアジア通貨危機は、短期外債に依存していた銀行圏がドル流動性の逼迫に直撃弾を受けて発生した。今日本側から出ているリスクは、国債評価損という、性質が全く異なる会計上の問題から出発する。二つの事件を「危機」という一つの単語で括ってしまうと原因診断がぼやけ、そうなれば対策も的外れな場所を狙うことになりかねない。個人的には、この区分が今回の記事で最も伝えたかったことの一つだ。同じ「危機」というラベルを貼っても、その中のメカニズムまで同じではないということだ。
では、真に見守るべきは何なのか
ここまで整理してみると、「円のバンクラン」という表現自体が、実は問題の本質を少し逸らした造語であるように思える。預金引き出しの行列ができる可能性よりも、国債市場の慢性的なストレスとキャリートレード解消の繰り返しの方が、より現実的な絵に近い。ブルッキングス研究所のシニア研究員は、日本はすでに債務危機の兆候を見せているとし、国債市場で危機が目立たないのは日本銀行が大規模に債券を買い入れて金利急騰を無理やり抑え込んでいるからであり、代わりにそのリスクが円の価値下落として反映されているという見解を出した。少し極端な解釈だが、完全に間違っているとも思えない。
ただ、これが今すぐ来月に勃発する危機かと問われれば、確信を持って答えるのは難しい。ある市場ストラテジストは、日本は依然として自国民を中心に国債を消化しているため、グローバルな金融システムリスクというよりは、漸進的な金利再評価プロセスと見るのが妥当だという意見も出した。逆に、ある証券会社の研究員は日本銀行が連続利上げに踏み切る可能性は限定的だとし、過度な円安を懸念して利上げ時期を早めたとしても、インフレサイクルが定着するまでは漸進的なスピードを維持するだろうという展望を出した。完全に相反する解釈ではないが、スピードに対する温度差は明らかにある。
個人的にこのテーマを掘り下げて感じたのは、数字一つ(45兆円、15兆円のような)が記事のタイトルに載ると、それがすぐに「危機」と翻訳されやすいということだった。だが、その数字がどの勘定に含まれているのか、誰が持っているのか、売らなければ損失が実現しない構造なのかをもう一歩深掘りしてみると、様相はかなり変わってくる。
とはいえ完全に安心できるわけでもないので、今後いくつか注視し続けるつもりだ。一つは9月のBOJ会合の結果と総裁発言のトーン。予告なく奇襲的に上げるのか、市場に十分なシグナルを送って動くのかによってキャリー解消の衝撃の大きさが変わることは前述した通りだ。二つ目は、地方銀行の中に東和銀行のように個別に評価損を一括償却する事例がさらに出るかどうか。これはリスクが局所的に爆発しているかを示す信号になり得る。三つ目は、ウォン・円相関係数が0.9台を維持し続けるかどうか。この数字が低くなれば、アジア通貨が再び個別の市場として分離されていることを意味するだろう。確信を持って結論を下すにはまだ早いが、少なくともどこを見ていればいいのか、そして「バンクラン」という単語を見る時に何をそのまま鵜呑みにしてはいけないのかは、今回ある程度整理できたように思う。
参考文献
- https://biz.heraldcorp.com/article/10757388
- https://news.nate.com/view/20260528n05225
- https://finance.yahoo.com/economy/policy/articles/96-billion-japan-bond-losses-190236239.html
- https://www.risk.net/risk-quantum/7963190/jgb-sell-off-drives-late-2025-record-markdowns-at-japanese-banks
- https://investorsobserver.com/economy/japans-bond-market-is-cracking-and-the-shockwaves-are-headed-west/
- https://www.morningstar.com/markets/how-japans-bond-selloff-impacts-banks-insurers
- https://finance.yahoo.com/news/japan-regional-banks-weather-foreign-005437691.html
- https://finance.biggo.com/news/n4yjK54B-PfaobXft4mW
- https://www.japantimes.co.jp/business/2026/05/25/companies/japan-bond-yield-surge-regional-banks-gap/
- https://www.mt.co.kr/world/2026/07/12/2026071014321738641
- https://namu.wiki/w/2025-2026%EB%85%84%20%EC%9B%90%ED%99%94%20%EA%B3%A0%ED%99%98%EC%9C%A8%20%EC%82%AC%ED%83%9C
- https://kbthink.com/investment/issues/yen-carry-trade-unwind.html
- https://www.newspim.com/news/view/20260608000460
- https://ko.tradingeconomics.com/japan/currency
- https://eiec.kdi.re.kr/policy/domesticView.do?ac=0000186430