ローマン望遠鏡が打ち上げに成功した。少しして関連ニュースを検索していると「ダークマター」というキーワードが目に入ったので、何気なく押してみた。ところが、その下に並んでいた2つのニュースが、互いに正反対の方向を指していた。一つは「星が一つもない銀河候補142個を発見」、もう一つは「NASA、ハッブルより視野が100倍広い宇宙望遠鏡を打ち上げ」。星がないのにそれを銀河と呼べるのかと思い原文を開くと、そこで3つ目の銀河の話に出会った。今度は逆に、星は正常にあるのに暗黒物質がほとんどない銀河だった。
片方には星のない銀河、もう片方には暗黒物質のない銀河。そして同じ8月30日に、この矛盾に真正面から取り組む望遠鏡が打ち上げられたというのが記事の内容だった。3つの事象が同じ時期に集中しているのが偶然にしては奇妙で、もう少し深掘りしてみた。
打ち上げ自体は順調だった
8月30日午前(米国東部時間7時26分)、ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡がスペースXのファルコンヘビーロケットに載せられ、ケネディ宇宙センター39A発射台から打ち上げられた。目的地は太陽-地球ラグランジュ点2(L2)、地球から約150万km離れた地点だ。打ち上げから7分後に最初の遠隔測定信号が受信され、31分後にはロケット本体から分離されたという。1時間23分後には太陽電池パネルと下部遮光幕の展開まで確認されたとNASA公式発表は伝えている。
L2まで到達するには3ヶ月かかる。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡も同じL2付近にいるが、2つの望遠鏡は互いに異なる軌道を描いて回る。到着後90日ほど装置を調整するコミッショニング期間を経て、2027年初頭から最初の画像を公開する予定だと惑星協会(The Planetary Society)の説明にある。初期ミッション期間は5年だが、状態が良ければその2倍以上延長される可能性もあるという。NASA長官のジャレッド・アイザックマンはこの打ち上げについて「予定より早く、予算内で達成した成功事例」と表現したそうで、実際この望遠鏡は当初の計画より早期に完成し、打ち上げスケジュールが前倒しされたという。
鏡はハッブルと同じなのに、なぜ視野は100倍広いのか
ここで最初に引っかかったあの文章に戻ろう。ローマンの主鏡直径は2.4メートルで、ハッブルと全く同じだ。しかし、ローマンが一度に撮影する写真1枚は、ハッブルの写真100枚を繋ぎ合わせたものに匹敵する空の面積を収める。鏡の大きさが同じなら画角も同じはずではないかと思い調べてみると、答えは鏡ではなくその背後にあるカメラ、すなわち広視野機器(WFI)にあった。
カメラに例えると理解しやすかった。同じレンズでも、背後にあるフィルムやセンサーが大きければ大きいほど、一度に収まる画角は広くなる。ローマンのWFIは3億画素の赤外線カメラで、塩クラッカー1枚サイズの4K検出器18個で構成されているとNASAは説明する。鏡が集めた光をこの広いセンサー配列が同時に受け取って記録するため、同じ鏡でも遥かに広い空を一度に記録できるのだ。その代わり、画素一つが担当する空の面積が広くなる分、非常に微細なディテールを捉える精度面では、ウェッブやハッブルの狭い視野での撮影には及ばない。これに加えてローマンは機械的にも安定しており、撮影間の待機時間がほとんど必要ないとのことで、このおかげで空を走査する速度自体はハッブルより1000倍速いという説明もあった。
広く速く走査するローマンと、狭く深く掘り下げるウェッブ。この2つが競争関係ではなく、役割を分担する相補的な関係であることは、NASA傘下SVSの資料での説明とも一致する。ウェッブが初期宇宙を深く覗き込む役割なら、ローマンはその宇宙がこれまでどのように進化してきたのかを広い視野で地図のように描く役割を担うということだ。
ローマンという名前の重み
この望遠鏡の名前は、ナンシー・グレース・ローマンという実在の人物に由来する。1959年から1979年までNASAで働き、NASA初の主席天文学者であり、初の女性幹部だった。ハッブル宇宙望遠鏡プロジェクトを草創期から率いた人物であり、「ハッブルの母」という別称でも呼ばれる。もともとこの望遠鏡はWFIRST(広視野赤外線サーベイ望遠鏡)という硬い略称で呼ばれていたが、打ち上げを控えて彼女の名を冠して改名された。
個人的にはこの部分が今回の打ち上げニュースで最も心に残った。通常、宇宙望遠鏡の名前は観測自体で有名な物理学者や天文学者の名が付けられることが多いが、ローマンは観測よりもプロジェクトを組織し導いた管理者としての功績が大きかった人物だ。広く見渡して次世代観測の地図を描くこの望遠鏡に彼女の名前が付けられたのは、偶然にしては妙にうまく調和している。
宇宙の95%は我々の目に見えない
ローマンの核心ミッションの一つが暗黒エネルギーと暗黒物質の正体を明らかにすることだが、これがなぜそれほど重要な問いなのかから짚(指摘)する必要がある。
一般的な銀河形成理論を単純化するとこうだ。暗黒物質が重力で集まって一種の「枠組み」を作り、その重力にガスが引き寄せられ、そのガスが再び集まって星が作られる。暗黒物質→ガス→星、この順序が標準的な図式だ。暗黒物質は光と相互作用しないため直接見ることはできない。それでも存在を確信する理由は、銀河内の星々の運動速度のためだ。目に見える星とガスの質量だけでは説明がつかないレベルの重力が銀河内で繰り返し観測されており、この「見えない残りの質量」を便宜上、暗黒物質と呼んでいるのだ。
標準宇宙論モデルによれば、宇宙は暗黒エネルギー68.3%、暗黒物質26.8%、我々が知る一般物質4.9%で構成されていると見なす。星、惑星、人間、地球――我々の目に見えるこれらすべてが、宇宙全体の質量エネルギーの5%にも満たないという意味だ。
星はないが暗黒物質だけある銀河
ところが、この枠組みにぴったり当てはまらない銀河が最近相次いで報告されている。まずは「星のない銀河」側。 ソウル大学の研究発表資料によると、ファン・ホソン教授の研究チームは、米国立電波天文台(NRAO)のユン・イルサン博士、ブライアン・ケント博士と共に、星がなく暗黒物質とガスだけで構成されていると推定される「ダーク銀河」候補を142個も新たに発見した。アレシボ電波望遠鏡探査(ALFALFA)とDESIレガシー画像探査のデータを活用し、ガスの運動を追跡する方式だったという。既存の世界的に知られた候補が10個前後しかなかったことを考慮すれば、候補数を一気に10倍以上に増やしたことになる。この成果は国際学術誌『天体物理学ジャーナル補足シリーズ』に掲載された。
この発見がなぜ重要かというと、「失われた付随銀河問題(missing satellite problem)」という古い難題と繋がっているからだ。標準宇宙論モデルは、大きな銀河の周囲にははるかに多くの小さな衛星銀河が存在するはずだと予測するが、実際に観測された数はそれよりはるかに少なかった。星がないためにこれまで目立たなかったダーク銀河たちが、その穴を埋める候補というわけだ。
噛み砕いて言えばこうだ。暗黒物質が重力の枠組みを作り、ガスもその中に集まってはいるが、そのガスが星を作るほど十分に凝集できないまま止まってしまった状態だ。標準シナリオの最初の2段階(暗黒物質→ガス)までは進んだが、最後の段階(ガス→星)で止まった事例と見ることができる。ソウル大の研究チームも「理論的に予測されるダーク銀河の数にはまだ及ばない」とし、後続の探査がさらに必要だという立場だった。
逆に暗黒物質がほとんどない銀河
このニュースと正反対の方向の発見もある。 イェール大ニュースルームの報道によると、イェール大学の研究チームが発表した矮小銀河「NGC 1052-DF9」は、星とガスはあるのに暗黒物質がほとんどないことがわかった。このタイプとしては3例目に確認された事例で、先に発見されたDF2、DF4に続くものだ。3つの銀河すべてが地球から約6,700万光年離れたNGC 1052銀河群の近くにあり、他の銀河9つと共にまるで一直線に並んでいるような痕跡を成している。
研究を率いたマイケル・ケーム(イェール大博士課程)は、もともと超大質量ブラックホールと誤認されていたこの天体を再検討しようと提案し、ハワイのケック天文台のコスミック・ウェブ・イメージャー(CWI)という装置で精密観測を行った。星々の運動速度を測定して銀河全体の質量を逆算した結果、DF9の質量は太陽の1億個程度――目に見える星とガスだけで説明可能なレベルだった。もしこの銀河が平凡な銀河のように暗黒物質を持っていたなら、質量は太陽の100億個を超えていなければならなかったという。100倍以上の差があるということだ。
ケームは「宇宙に存在するほぼすべての銀河は、暗黒物質が質量の大部分を占める」とし、「DF2・DF4・DF9は非常に例外的な銀河」と明かした。研究チームが提示したシナリオはこうだ。過去に2つの銀河が高速で衝突した際、一般物質(ガス)と暗黒物質が互いに分離され、離れ去ったガスだけが別に集まってこのような特異な銀河が作られた可能性があるというものだ。3つの銀河が同じ一直線上の軌道上に並んでいるという事実自体が、この衝突仮説を裏付けている。
2つの発見を並べてみると
この2つの発見を並べてみると、興味深い図式が浮かび上がる。片方には暗黒物質はあるが星を作れなかった銀河。もう片方には星はあるが暗黒物質が抜け落ちた銀河。銀河形成という一つの過程の中で、暗黒物質と星という2つの要素が互いに完全に結合しなくても、それぞれ別に存在し得ることを示す事例だ。
これがなぜ重要なのか。銀河形成理論が「暗黒物質と星は常にセットになっている」という前提の上に立っていたなら、こうした例外事例は、その前提自体を再検討させる。標準モデルが丸ごと間違っているという意味ではない。ただ、暗黒物質と一般物質が特定の条件(再電離期のガスの停滞、銀河間高速衝突など)では分離され得るということを、実際の観測で確認したに近い。ただし、こうした例外事例がどれほど一般的か、偶然に引っかかった数個に過ぎないのか、それとも予想より遥かに普遍的な現象なのかはまだ定かではないようだ。
これまでに出たこうした例外事例は、ほとんどが狭い視野で偶然に見つかった発見だった。ソウル大チームのダーク銀河142個は電波望遠鏡の探査データを掘り起こして見つかったものであり、DF2・DF4・DF9も特定の銀河群一つを精密追跡する中で発見された。標本自体が偶然に大きく依存しているため、「こうした銀河は本当に稀なのか、それとも我々が見つけられていないだけで稀に見えるだけなのか」という問いには、まだ誰も確実に答えることができない。まさにこの点が、100倍広い視野を持つローマンが割り込む場所だ。
ローマンがこの矛盾の中に踏み込む地点
ローマンの主要ミッションの一つが、まさに暗黒エネルギーの正体を明らかにすることだ。数十億個の銀河を観測して宇宙の大規模構造が時間とともにどのように進化してきたのかを地図にし、これを通じて暗黒エネルギーの特性を制約するという計画だ。宇宙望遠鏡科学研究所のクリスティン・マックィーン(ローマンミッションオフィス長)は打ち上げ前に、「我々が理解する物理学から根本的に抜け落ちている何かがある可能性があり、ローマン望遠鏡にはそれを明らかにする潜在力がある」と語ったという。
広い視野は、先ほど見たような例外銀河を探す上でも有利に働くと見られる。これまでの発見が狭い視野で偶然見つかった事例に近いものだったとすれば、ローマンのように広い視野で遥かに多くの銀河を一度に統計的に走査できるようになれば、話は変わってくる。星のないダーク銀河や暗黒物質のない銀河が本当に稀な偶然なのか、それとも銀河形成過程に最初から内在している一般的な枝分かれなのかが、遥かに明確な数字で明らかになる可能性があるのではないだろうか。個別の発見一つひとつの劇的な叙事詩より、数千数万個のデータが積み重なることで作られる銀河形成地図に近い成果が出るという意味だが、こうしたタイプの成果はニュースの見出しには少し地味かもしれない。
系外惑星側の数字も目を引いた。過去数十年間、人類が確認した系外惑星は約6,000個程度だが、ローマン一つで重力マイクロレンズ方式により、これより遥かに多い10万個前後を見つけ出せるという展望が出ている。この数値はあくまで事前予測値であり、実際の検証は2027年初頭以降にしかできない。ローマンにはコロナグラフ装置も搭載されており、星の光を遮ってその隣の惑星を直接撮影する技術で、将来的に地球型惑星を直接撮影するという「居住可能世界観測所(Habitable Worlds Observatory)」構想の技術実証の役割も担うという。
まだ開かれている問い
正直に言って、この記事をまとめながらもすべて理解できたという確信はない。暗黒物質というものがそもそも直接観測されたことがなく、重力効果でその存在を推論する概念であるため、「暗黒物質がない銀河」という表現自体も結局「重力異常現象が観測されない銀河」を言い換えたものに近い。もしかすると、我々が暗黒物質と呼ぶものの正体をまだ正しく理解できていないからこそ、こうした例外のように見える事例が、実は理論の隙間を埋める手がかりになるのかもしれない。
現時点で確かなのは、打ち上げが成功したということだけだ。今後90日の調整期間を無事に通過し、2027年初頭から実際のサーベイを開始して初めて、この望遠鏡が本当に暗黒エネルギーと暗黒物質の正体を解明するのに寄与するかどうかがわかる。こうした大型ミッションは、最初の写真1枚より何年にもわたるサーベイデータが蓄積されてこそ真の成果が出る場合が多い。星のない銀河142個と暗黒物質のない銀河3個が、統計で裏付けられるほど一般的な現象なのか、それとも偶然に引っかかった特異事例として残るのか――このパズルがもう少し組み合わさるのを見届けるには、どうしてもかなり長く待たなければならないようだ。
参考文献
- NASA, NASA's Dark Universe-Seeking Nancy Grace Roman Space Telescope Launches https://www.nasa.gov/news-release/nasas-dark-universe-seeking-nancy-grace-roman-space-telescope-launches/
- 惑星協会, The Nancy Grace Roman Space Telescope launch: what to expect https://www.planetary.org/articles/the-nancy-grace-roman-space-telescope-launch-what-to-expect
- EarthSky, Nancy Grace Roman Space Telescope https://earthsky.org/space/nancy-grace-roman-space-telescope/
- Popular Science, NASA's Nancy Grace Roman space telescope launches https://www.popsci.com/science/nancy-grace-roman-space-telescope-launch/
- CNN, Nancy Grace Roman Space Telescope will illuminate unseen universe https://www.cnn.com/2026/08/30/science/nancy-grace-roman-space-telescope-launch
- NASA Science, Nancy Grace Roman Space Telescope https://science.nasa.gov/mission/roman-space-telescope/
- Wikipedia, Nancy Grace Roman Space Telescope https://en.wikipedia.org/wiki/Nancy_Grace_Roman_Space_Telescope
- NASA SVS, Far and Wide — Differences between Hubble, Webb, Roman https://svs.gsfc.nasa.gov/vis/a010000/a014800/a014891/14891_FarAndWide1_Differences_HTML_Transcript.html
- 京郷新聞, 'ローマン宇宙望遠鏡'打ち上げ成功 https://www.khan.co.kr/article/202608302212005/
- Daumニュース(連合ニュース系列), 星のない銀河、暗黒物質のない銀河…銀河はどう作られるのか https://v.daum.net/v/20260808180211026
- ソウル大学校, 暗黒物質だけある銀河を大量発見 https://www.snu.ac.kr/research/highlights?md=v&bbsidx=156487
- Yale News, Third time's the charm for a row of faint galaxies without dark matter https://news.yale.edu/2026/06/16/third-times-charm-row-faint-galaxies-without-dark-matter
- Scientific American, Astronomers discover another galaxy seemingly devoid of dark matter https://www.scientificamerican.com/article/astronomers-discover-another-galaxy-seemingly-devoid-of-dark-matter/
- Universe Today, Astronomers Discover Another Galaxy With No Dark Matter https://www.universetoday.com/articles/astronomers-discover-another-galaxy-with-no-dark-matter/
- Keim, M. A. et al., A Third Galaxy Missing Dark Matter along a Trail of Galaxies in the NGC 1052 Field, The Astrophysical Journal (2026)