フィジカルAI革命とLGの賭け
ChatGPTが登場したとき、世界は「これで文章作成は終わりだ」と言った。1年後には「画像生成も終わりだ」と言った。しかし、最も重要な問いを誰もしていなかった。
この賢い頭脳が画面の外に出たらどうなるのだろうか?
皿を洗ったり、工場ラインで部品を掴んだり、病院の廊下で患者の配膳をしたり――そんなありふれた労働を。これまでAIは画面の中に閉じ込められていた。2026年、その境界が崩れ始めている。
I. 手のない天才の限界
LLM(大規模言語モデル)がどれほど優れているかは、今や誰もが知っている。大学入試の数学問題を解き、弁護士試験に合格し、複雑なコードを作成する。
しかし、この天才には決定的な弱点がある。
コップを持てない。
人間の手がその動作を遂行する際にどれほどの情報を処理しているかを考えれば、この問題の規模が見えてくる。
ガラスのコップか紙コップか?
どれくらい入っているか?
熱いか? 滑るか?
手首をどれくらい傾けるべきか?
これら全ての判断を、人間は0.3秒以内に無意識のうちに処理している。
既存の産業用ロボットは、この問題を別の方法で解決してきた。
判断しないのだ。
代わりに、同じ場所に常に同じ物を置き、数万行の軌道コードを事前に入力して機械的に繰り返す。
-> これが過去40年間の工場自動化だった。
その方法は速くて正確だが、一つだけできないことがある。変化への適応。
部品の位置が2センチずれると停止する。予期せぬ物が現れると停止する。照明が変わると停止する。
-> これらのロボットは天才ではなく、丸暗記の達人だった。
フィジカルAIは、この方程式を変えようとする試みだ。
強力なAIの頭脳を実際のハードウェアと結合し、見て、判断し、行動するシステムを作る。
そしてこの瞬間、数十年間家電製品を作り続けてきた企業が、全く予期せぬ方向からゲームの中心へと歩み入ってきた。
II. LGという名前が似合わない理由、そして似合う理由
正直に言えば、**「LGがロボット革命をリードする」**という言葉は、初めて聞くと違和感がある。
LGは冷蔵庫の会社だ。洗濯機やエアコン、OLEDテレビを作る場所だ。
ロボット企業といえば、ボストン・ダイナミクスやテスラ、Figure AIのような名前が先に浮かぶ。LGは、そのリストにはなかった。
しかし、この違和感は表面を見ているから生じる。
洗濯機を作るにはモーターが必要だ。それも、数百万回回しても故障しない精密モーター。LGが開発したDD(Direct Drive)モーターは、ベルトやギアなしで洗濯槽を直接駆動するが、この技術は世界最高水準の精密トルク制御を要求する。エアコンのコンプレッサーを制御するインバーター技術も同様だ。
数十マイクロ秒単位で回転数を調整するこの能力は――ロボット関節を制御するサーボモーター技術と構造的に同一である。
LGは60年間、ロボット部品の技術を作り続けてきた。ただ、それが冷蔵庫や洗濯機の中に入っていただけだ。
今、その技術が殻を破って出てくる。
III. 엑사온(EXAONE):ロボットに言葉を教えるということ
ロボットが物体を認識する従来の方式はこうだ。
リンゴの形状を3Dポイントクラウドとして保存し、入力画像とパターンをマッチングする。この方式はかなりうまく機能するが、致命的な制約がある。初めて見る物体を前にすると停止してしまう。
世の中にはあまりにも多くの物体がある。リンゴはリンゴだが、半分に切れたリンゴもあれば、皮をむいたリンゴ、しわくちゃの古いリンゴもある。これらを全てデータベースに入れることはできない。
LG AI研究所が開発した**엑사온(EXAONE)**の最新バージョンが、この問題にアプローチする方式は異なる。
言語と視覚を同時に訓練する。
EXAONE 4.5は視覚言語モデル(VLM, Vision-Language Model)だ。テキストと画像を一緒に処理するこの構造は、「半分に切れた茶色いリンゴ」という文章とその画像を関連付ける。言語で概念を理解するため、初めて見る物体でも「これはリンゴの一種であり、中身が露出しているので慎重に扱う必要がある」という推論が可能になる。
これは単なる技術改善ではない。ロボットが世界を理解する方式のパラダイムシフトだ。
EXAONE Deepは、さらに一歩進む。
LGが韓国で初めて開発した「推論型AI」であるこのモデルは、単に「これは何か?」に答えるだけでなく、「どのような順序で何をするべきか」を計画する。
「部屋を掃除して」という一つの文章の命令が入ると、EXAONE Deepは独自に作業を分解する。
まずカメラで空間をスキャンし、障害物の位置をマッピングする。次に、サイズと材質によって処理順序を決める。ペットや子供が感知されると、速度を落としたり停止したりする。全ての作業が終わると、充電ステーションに復帰する。
人間が毎朝行うそのありふれた日常を、このAIは自ら計画し実行する。
ロングホライゾンタスク:本当に難しい問題
しかし、ロボット工学者の間では、本当に難しい問題が別にある。**「ロングホライゾンタスク(Long-horizon Tasks)」**と呼ばれるものだ。
「コップを取って」は簡単だ。単一の動作であり、結果は即座に確認できる。しかし、実際の生活はこうなっている。
「テーブルの上を片付けて、食器を食洗機に入れて、作動させて、終わったら乾燥を確認して食器棚にしまって。」
この命令の中には、数十個の判断が隠されている。
食器は何枚あるか?
食洗機の中にスペースはあるか?
乾燥が終わったことをどうやって確認するか?
食器棚のどの場所に、どんな食器が入るか?
さらに複雑な問題は、各段階の間に「待機」が存在することだ。
食洗機が作動する40分の間、ロボットは何をすべきか?
そしてその間に、他のことをして、正確なタイミングで戻ってくることができるか?
EXAONE 4.5は、この連続的な因果関係を推論する能力を極大化する方向で設計されている。
物理世界でのオブジェクト間の関係を時間軸上で論理的に演算すること――これが家事支援ロボットの商用化における最後の障壁であり、LGがそれを乗り越えようとしている。
IV. 体を作るということ:関節、筋肉、そして骨
ソフトウェア開発は、数台のサーバーとエンジニアで始めることができる。ハードウェアは異なる。精密部品を大量に作るには、数十年の工程ノウハウと数千億ウォンの設備が必要だ。
LG電子がロボット市場で本当に脅威的な理由がここにある。
アクチュエーター:ロボット関節の心臓
人間の肘関節を思い出してみよう。この関節は単に曲がるだけではない。
力の強さを調整し、方向を変え、突然の衝撃に対応し、疲労を感じずに数万回繰り返す。
ロボットにおいてこの役割を担うのが**アクチュエーター(Actuator)**だ。
モーターとドライバー、減速機が統合された関節モジュールで、ヒューマノイド一体の製造原価の20~30%以上を占める。
これまで、この核心部品は日本とスイスの企業が事実上独占してきた。
グローバルロボット企業は高額な価格で輸入しながら、リードタイム(発注から納品までの期間)が長くなるたびに生産を止めなければならなかった。
LG電子は、このサプライチェーンの弱点を正面から攻略した。
洗濯機DDモーター技術から出発したLGのサーボモーター設計能力は、
電力消費を30%削減しながらも瞬間回転トルクを大幅に高めるアクチュエーターへと進化した。
2026年上半期、LGはロボット用アクチュエーターの初ロットの本格量産に入る。これで韓国企業がロボット関節を直接作る。
減速機:力を精密に分配するギア
モーターが速い回転を生み出すなら、減速機(Reducer)はその回転を遅く、強く、精密に変換する。
例えば、毎分3000回転するモーターの出力を毎分30回転の強い力に変え、ロボットアームが物体を正確に掴めるようにする。
この減速機の歯車の歯がどれほど精密に加工されるかが、ロボットが卵を割らずに掴めるかを決定する。
LG電子は、精密機械工学設計と特殊表面処理工法を内製化し、この領域でも独立を推進している。
KAPEX:韓国のヒューマノイドロボット
韓国科学技術研究院(KIST)が設計したヒューマノイドロボットプラットフォーム「KAPEX」は、国家が主導するロボットR&Dの核心だ。
LG電子は、このプラットフォームに自社の大量生産ノウハウとモジュール設計(Modular Design)を移植する作業を主導している。
モジュール設計とは、簡単に言えば、複雑なロボットをレゴのように組み立てられるようにすることだ。
関節の一つが故障したら、そのモジュールだけ交換すれば良い。全体を分解する必要がない。
製造原価が下がり、メンテナンスが容易になり、大量生産が可能になる。
これが家電製品製造で60年を積み上げてきたLGの真の強みだ。
どれだけ賢く作るかではなく、どれだけ多く、どれだけ安く作るか。
V. バッテリー:ロボットが倒れないためには
ロボットが家庭に入る上で最も大きな心理的障壁は安全性だ。
中でも火災リスクは決定的だ。
既存のリチウムイオン液体系バッテリーは、衝撃を受けると内部電解質が漏れ出し、火災が発生する可能性がある。
工場や倉庫ではこのリスクをある程度管理できるが、家の中は違う。子供がいて、老人がいて、ペットがいる。ロボットが転倒したり衝突したりした際に火災が発生してはならない。
LGエネルギーソリューションは、ここに決定的なカードを切った。
高安全全固体バッテリー。
固体電解質を使用するこのバッテリーは、衝撃を受けても火災が発生しない。
エネルギー密度は既存バッテリーより高く、1回の充電でより長く動作する。
LGが提示する数値は、既存の1.5~2時間から4~5時間への拡張だ。
これが数字に過ぎない理由はない。この差が、「使えるロボット」と「使えないロボット」を分ける線だからだ。
料理一食分を準備するのに45分かかる。バッテリーが1.5時間なら、ロボットを使いながら充電しなければならない。4~5時間なら、一日の仕事を終えることができる。
VI. NVIDIAとの同盟:何を 주고何を受けるか
2026年5月、LG電子とNVIDIAの協力が市場の注目を集めた。しかし、この関係を単に「大企業間のパートナーシップ」と捉えると本質を見誤る。
この同盟には構造的な相互補完性がある。
NVIDIAがLGに与えるもの
NVIDIAのIsaacプラットフォームは、ロボットソフトウェアの核心オペレーティングシステムだ。
ロボットが物体を認識し動作を計画するアルゴリズム、複数のセンサーデータをリアルタイムで融合するパイプライン、GPUに最適化された推論エンジンが含まれる。
Jetsonは、このソフトウェアをロボット内部で低消費電力で駆動するエッジコンピューターだ。
-> LGがこれを搭載すると、ロボットの頭脳演算速度が向上し、既存のPCベース制御システムより消費電力が大幅に削減される。
LGがNVIDIAに与えるもの
NVIDIAは賢いソフトウェアを持っているが、それを現実世界に適用するハードウェア製造パートナーが必要だ。
ロボットを数千台、数万台作れる工場、大量生産された精密アクチュエーター、家電流通網を通じて家庭にロボットを供給するチャネル――これは半導体企業が一人で作れるものではない。
LG電子が持っているものが、まさにNVIDIAに欠けているものだ。
Omniverse:仮想空間で先に学習する
このパートナーシップで、あまり言及されない核心がある。NVIDIAのOmniverseプラットフォームだ。
ロボットを実際のハードウェアの上だけで学習させると、コストが天文学的になる。
機械が壊れ、物が壊れ、事故が起こる。数千万回の試行錯誤を物理空間で行うのは不可能だ。
Omniverseは、現実世界を正確に模倣した3D仮想環境だ。
重力、摩擦、物体の弾性、光の反射まで、物理法則をそのまま実装している。
LG電子は、この仮想空間で数万台の仮想ロボットを同時に学習させ、その学習結果を実際のハードウェアに移植する。
物理設計上のエラーを事前に発見し、ロボットアーム制御の精度を飛躍的に高める方式だ。
現実世界で一度も試行錯誤を経験せずに、すでに数万回の学習を終えたロボット。これがフィジカルAI時代の競争力だ。
VII. データセンターを冷やす者がAI時代を支配する
LGとNVIDIAの協力は、ロボットに限定されない。
ここから全く予期せぬ収益構造が登場する。
NVIDIAのH100、B200 GPUがぎっしり詰まったAIデータセンターは、膨大な熱を発生させる。
単純計算で、高性能GPU一つが最大700Wの電力を消費する。
数万枚が集まると、かなりの地方都市の電力消費に匹敵する。
この熱を処理できないと、GPUは性能を低下させる(thermal throttling)か、あるいは停止してしまう。
ここでLG電子のエアコン技術が、全く異なる文脈で核心インフラとなる。
チラー(Chiller):建物を丸ごと冷やす技術
大型チラーは、数百台のサーバーラックが密集したデータセンター全体の空間温度を一定に維持する冷却システムだ。
LG電子は、この分野のグローバル最大手の一つだ。
Microsoftは既にLG電子の超大型チラー設備をAzureデータセンターに供給することで合意している。
CDU(Cooling Distribution Unit):チップ表面を直接冷やす
空冷の限界を超えるために登場したのが液冷だ。
CDUは、冷却水をGPUチップのすぐ上に設置された冷却プレートを通して循環させ、熱を直接除去する。
効率は空冷より数十倍高く、GPUはより高い性能を安定的に発揮できる。
LG電子は、このCDU分野でNVIDIAの公式ハードウェア認証を推進中だ。
高精度仮想センサー技術とインバーターポンプ技術――こちらも家電から出発した技術――を適用し、安定性を証明している。
AIコンピューティング需要が爆発的に増加する限り、データセンターの冷却需要も共に増加する。
ロボットがまだ成長中の市場である一方、データセンター冷却は既に需要が爆発している市場だ。
LGはAI革命の二つの方向、すなわちロボットという未来と、冷却という現在に同時に賭けている。
VIII. 坡州データセンター:ロボットの外付け頭脳
ロボットが複雑な推論を実行する際、全ての計算をロボット内部で処理する必要はない。実際には処理も難しい。
大規模言語モデルをオンデバイスで駆動するには、膨大なコンピューティングリソースが必要だ。
LG Uplusが坡州に建設中のAIデータセンターがこの問題を解決する。
200メガワット(MW)規模、最大12万枚のGPUを収容するこの施設は、首都圏最大規模だ。
ロボットが現場で判断しにくい複雑な推論作業を、このサーバーファームにリアルタイムで委託し、結果を受け取って即座に行動する。
これが**「クラウドブレインロボット」アーキテクチャ**だ。
核心は遅延時間(latency)だ。ロボットが判断を要求し、結果を受け取るのに100ミリ秒(0.1秒)かかると実用的ではない。10ミリ秒以下でなければならない。
これを実現するため、LG Uplusの5G/6G高速専用線とエッジコンピューティングノードが組み合わされる。
LGグループ内では、通信事業者は辺境だった。
しかし、ロボット時代が来ると、超低遅延ネットワークはロボットの神経系となる。
IX. 「ワンLG」:垂直系列化の完成
これらの全てのピースを一度に見ると、一つの絵が見えてくる。
LG AI研究所が頭脳(EXAONE)を作る。
LG電子が体(KAPEX, CLOi)と関節(アクチュエーター)を作る。
LGエネルギーソリューションが心臓(全固体電池)を作る。
LG Uplusが神経系(5G/6G + AIDC)を提供する。
LG CNSがこのシステムを工場と物流倉庫に統合する。
これが**「ワンLG(One LG)」戦略**だ。
競合他社がこのエコシステムを構築するには何が必要か?
AIモデル開発会社一つ、ロボット製造会社一つ、バッテリー会社一つ、通信会社一つ、システム統合企業一つを探して契約し、調整しなければならない。
それぞれのインターフェースで摩擦が生じ、ボトルネックが生じ、責任の所在が曖昧になる。
-> LGはこれら全てを一つの屋根の下で行う。
垂直系列化は効率の問題ではない。これは速度の問題だ。
ロボットAIモデルがアップグレードされれば、同じ日にバッテリー管理システムやネットワークプロトコルも一緒に最適化できる。
他社部品を待ったり、契約を再検討したりすることなく。
世界でこのようにできる会社は数えるほどだ。
X. CLOiが歩んできた道
LG電子のサービスロボットブランド**「CLOi(クロイ)」**は、既に現実で稼働している。
2019年に初めて公開された時、CLOiはホテルのロビーで道案内をする地味なロボットだった。その後、レストラン配膳、病院案内、物流倉庫内での物品運搬へと領域を拡大した。この過程でLGが得たのは売上だけではなかった。
現場データだった。
ロボットが実際の環境で稼働しながら収集したデータ――人々がどのように移動するか、どのような例外状況が発生するか、どのような命令をどう解釈すべきか――がEXAONEの学習データとなる。
CLOiは製品であると同時に、データ収集インフラだった。
このデータがなければ、どんなに優れたAIモデルも現実では戸惑う。
LGの目標は、2028年のホームロボットの完全商用化だ。家電製品を連携させ、家を管理するスマートホームハブ兼秘書ロボット。洗濯機をオンにし、エアコンを調整し、冷蔵庫の在庫を把握して必要な食材を注文する――そのロボットが、既にCLOiという名前で現場で訓練中だ。
XI. 数値で見る市場:ロボット産業の規模
グローバルコンサルティング機関は、2030年までにフィジカルAIとヒューマノイドロボット市場が数千兆ウォン規模に成長すると見込んでいる。この数字を実感しにくいなら、別の比較を考えてみよう。
2007年に最初のiPhoneが発売された時、スマートフォン市場は存在しなかった。それから10年後、スマートフォンは世界人口の半分以上が持つ物になった。スマートフォン関連部品、アプリ、サービスが生み出した市場は数千兆ウォンを超えた。
ロボット産業が「第二のスマートフォン革命」と呼ばれる理由がここにある。規模の問題ではなく、構造の問題だ。
スマートフォンがPC時代のコンピューティングを個人化したように、ロボットはAI時代の労働を物理化する。
この転換において、部品サプライチェーンを握る企業が持つレバレッジは計り知れない。
スマートフォン時代にサムスンが部品を売ってAppleの成功からも収益を上げたように、
LG電子は、どのロボット企業が勝っても、アクチュエーターとバッテリーと冷却ソリューションを供給する立場を狙っている。
XII. 株価の話:なぜ市場は今LG電子を再評価するのか
長らくLG電子は韓国株式市場で低評価企業を代表する事例だった。
理由は単純だった。家電メーカーは景気サイクルに乗る。家を買えば冷蔵庫を買い、家賃が上がればテレビを買い替える。不況が来れば、どちらも買わない。この予測可能な限界の中で、株価収益率(PER)は6~8倍に留まった。株価純資産倍率(PBR)は1倍を下回っていた。資産価値よりも安い会社という意味だ。
しかし今、このフレームが崩れている。
AIデータセンター冷却ソリューションは景気サイクルに乗らない。AI演算需要は景気が良くても悪くても増加する。ここから発生する売上は、季節的変動なしに予測可能だ。
ロボットアクチュエーター供給契約も同様だ。一度サプライチェーンに入ると、長期契約につながるB2B事業だ。
サブスクリプション型サービスロボット(RaaS, Robot as a Service)はさらに強力だ。ロボットを売るのではなく貸し出し、月単位で料金を受け取る。これにソフトウェアアップデート、メンテナンス、エネルギー最適化サービスをパッケージで묶ると、一度顧客になった企業は容易に離脱しない。
このような収益構造を持つ企業には、PER 15~20倍が適用される。伝統的な家電株からAIインフラ企業へと分類が変わると、同じ利益でも株価は2~3倍変わる可能性がある。
ハナ証券をはじめとする主要証券会社がLG電子の目標株価を従来の16万ウォン台から23万ウォン以上に45%以上引き上げたのは、この論理の反映だ。
もちろん、これは未来への期待が含まれた数字だ。ロボット市場が予想通りに開かない可能性もあり、技術開発が遅延する可能性もあり、強力な競合他社が登場する可能性もある。株価は期待を反映するが、現実は常にさらに複雑だ。
しかし、一つだけ確かなことがある。LG電子は、もはや「家電株」というフレームだけで評価されることはない。
XIII. 競争地形:LGが直面する挑戦
これらの利点にもかかわらず、LGの前には容易ならざる競争が待っている。
テスラはOptimusロボットを自社工場で運用し、実戦データを蓄積している。自社EV工場が、まさにロボット訓練場となる。Figure AIはBMW工場で既に作業中で、ApptronikはAmazonの物流倉庫と手を組んでいる。
これらの企業とLGの決定的な違いは何か?
二つだ。製造能力とエコシステム。
テスラとFigure AIはロボットを作れるが、数十万個の精密アクチュエーターを大量生産する工場は持っていない。
全固体バッテリーを供給するバッテリー系列会社もいない。
家電流通網を通じて数億世帯にアクセスするチャネルも持っていない。
LGが作っているのは、ロボット一体ではなく、ロボット産業全体のサプライチェーンだ。これは短期間で複製できない堀(moat)だ。
一方、LGの弱点はソフトウェアだ。
EXAONEは急速に進化しているが、OpenAIやGoogle DeepMindのロボットAI研究と比較すると、まだ距離がある。
AI競争の速度は予測が難しく、ソフトウェア優位はハードウェアよりも早く覆される可能性がある。
これがLGがNVIDIAとパートナーシップを結んだ理由でもある。ソフトウェアは最高を借り、ハードウェアは直接作る。
XIV. 2026~2029:段階別現実化シナリオ
LGが提示するロードマップは三段階だ。
第1段階(2026~2027):部品サプライチェーン確保
ロボット一体を完成させる前に、ロボットの部品を大量に作れるようにしなければならない。アクチュエーター量産、減速機内製化、EXAONEベースのロボットAIプラットフォームのB2B実証がこの段階の目標だ。大型病院、物流倉庫、スマートファクトリーでのパイロット運用が始まる。
第2段階(2027~2028):サービス拡散
坡州AIDCと5G/6Gネットワークを結合したクラウドブレインロボットアーキテクチャが本格稼働する。CLOiロボットの高度化によるホームロボット市場の先行獲得が始まり、RaaSビジネスモデルが本格化する。
第3段階(2029年以降):完全ヒューマノイド
全固体バッテリー第2世代と結合された完全自律型ヒューマノイドが家庭、介護、製造現場に投入される。人間の単純肉体労働を代替する物理的ソリューションが現実となる。
このロードマップがどれほど正確に実現されるかは分からない。技術は計画通りには熟さない。しかし、方向自体は明確だ。そして、この方向へ既に動いていることは明らかだ。
XV. 最後の質問
コップを持ち、食洗機に入れる動作。
人間には3秒の作業だ。ロボットにとっては数十年間の研究が必要な作業だった。そして今、その3秒が現実へと近づいている。
しかし考えてみると、この問いが本当に興味深い方向へと転換する。ロボットが皿洗いをしてくれたら、人間はその時間をどこに使うのか?
洗濯機が出た時も同じ問いがあった。洗濯を手でしなくてよくなったら、女性たちはその時間をどこに使うのか?実際には余暇が増えたのではなく、清潔さの基準が高まった。週に一度洗っていたものを毎日洗うようになった。労働の総量は変わらず、労働の形態だけが変わった。
ロボットが単純労働を代替したら、人間はより複雑な労働をするようになるのか?それとも本当に休めるのか?あるいは、今私たちが想像もできない全く別の問題が生じるのか?
LG電子が作っているのはロボットだ。しかしそれが完成する日、私たちが直面するのは技術の問題ではないかもしれない。それは、私たちが人間という存在をどう定義するかという問題だろう。
その問いには、まだ誰も答えられていない。
参考文献
- LG AI研究所、「超巨大マルチモーダルファウンデーションモデルEXAONE 4.5技術白書および視覚認知知能技術仕様」(2026)
- LG電子、「2026年第1四半期決算発表および企業カンファレンスコール速記録 — ヒューマノイドロボット事業およびNVIDIAとの協力計画発表内容」(2026年4月)
- ハナ証券リサーチセンター、「LG電子企業分析レポート:ロボットバリューチェーン本格搭乗および目標株価引き上げ」(2026年5月)
- ソウル経済TV、「LG電子、場中急騰の実体:NVIDIAとフィジカルAI戦略的蜜月分析」(2026年5月動画報道)
- ニュース핌、「LG電子、NVIDIAとヒューマノイド協力および減速機/アクチュエーター初ロット上半期量産発表取材」(2026年4月)
- 韓国科学技術研究院(KIST)、「K-ムーンショット核心プロジェクト:韓国型高機能ヒューマノイド「KAPEX」プラットフォーム開発仕様およびコンソーシアム構成案」(2026)
- ZDNet Korea、「LG電子、次世代液冷ソリューションCDU技術特徴およびNVIDIA認証サプライチェーン参入議論取材」(2026)
- 新韓投資証券、「LG電子株価バリュエーション再評価およびスマート家電-サービスロボット連携サブスクリプションビジネス展望」(2026年4月)
- 韓国経済、「LG電子とグローバル委託生産(EMS)企業FlexのAIデータセンター専用モジュール型冷却ソリューション共同開発合意分析」(2025年11月)
- News1、「ワンチームLG戦略:首都圏最大坡州AIDC構築とEXAONE 4.5結合エージェンティックAI未来構想」(2026年3月)
- SOD Techチャンネル、「世界が驚愕したヒューマノイド開発技術と韓国型人工知能ロボットプラットフォームの隠された実体」(2025年10月)
- シンサイダンチャンネル、「ジェンスン・フアンの大きな絵とNVIDIA-LGフィジカル同盟:これから訪れる1000兆ウォンロボット市場精密分析」(2026年5月)
- Goldman Sachs Global Investment Research, “The Robot Revolution: The Economics of Humanoid Automation” (2025)
- McKinsey Global Institute, “Generative AI and the Physical World: From Language Models to Physical AI” (2025)
- NVIDIA Corporation, “Isaac Platform and Jetson AI Edge Computing for Robotics — Technical Overview” (2026)
参考文献
- LG AI研究所、"超巨大マルチモーダルファウンデーションモデルEXAONE 4.5技術白書および視覚認知知能技術仕様"
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- ハナ証券リサーチセンター、「LG電子企業分析レポート:ロボットバリューチェーン本格搭乗および目標株価引き上げ」
- ソウル経済TV、「LG電子、場中急騰の実体:NVIDIAとフィジカルAI戦略的蜜月分析」
- ニュース핌、「LG電子、NVIDIAとヒューマノイド協力および減速機/アクチュエーター初ロット上半期量産発表取材」
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- 新韓投資証券、「LG電子株価バリュエーション再評価およびスマート家電-サービスロボット連携サブスクリプションビジネス展望」
- 韓国経済、「LG電子とグローバル委託生産(EMS)企業FlexのAIデータセンター専用モジュール型冷却ソリューション共同開発合意分析」
- News1、「ワンチームLG戦略:首都圏最大坡州AIDC構築とEXAONE 4.5結合エージェンティックAI未来構想」
- SOD Techチャンネル、「世界が驚愕したヒューマノイド開発技術と韓国型人工知能ロボットプラットフォームの隠された実体」
- シンサイダンチャンネル、「ジェンスン・フアンの大きな絵とNVIDIA-LGフィジカル同盟:これから訪れる1000兆ウォンロボット市場精密分析」
- Goldman Sachs Global Investment Research, "The Robot Revolution: The Economics of Humanoid Automation"
- McKinsey Global Institute, "Generative AI and the Physical World: From Language Models to Physical AI"
- NVIDIA Corporation, "Isaac Platform and Jetson AI Edge Computing for Robotics — Technical Overview"