冷凍庫の扉を開けると、いつもそこに緑色の袋があった。
ヘテ「故郷餃子(コヒャンマンドゥ)」。
油を引いたフライパンでこんがりと焼ける音を覚えている人なら、この餃子が30年以上も冷凍餃子市場を支配してきたという事実も馴染み深いことだろう。
ところが最近、スーパーの冷凍ケースを覗くと状況は一変している。
一番広い場所を占めているのは、青いパッケージの「Bibigo王餃子」だ。故郷餃子は、なぜ30年かけて築き上げた王座をそっくりそのまま明け渡してしまったのか。
答えは、家電普及率という一つの数字から始まり、「標準」に安住した代価を経て、結局はブランドにファンがいたかどうかという問題に集約される。
1987年、故郷餃子はいかにして冷凍餃子を国民的おやつにしたか
1987年以前まで、餃子とは祝日に家族みんなで囲んで包む「精魂込めた料理」だった。
その年、ヘテ製菓が大規模な自動化設備を導入し、故郷餃子を発売したことで状況は一変した。タイミングが絶妙だった。
1980年代後半、ソウルオリンピックを控え経済が高度成長していたあの頃、食卓の風景を変えた決定的な変数は、他ならぬ家電だった。
世帯あたりの冷蔵庫普及率が90%を超え、家ごとに**「冷凍庫」という空きスペースが新たに生まれ、ヘテはこの空間を正確に狙い撃ちした**。
自動成形機で手包みのような形を大量生産し、「パパでも作れる特食」という広告コピーで変化する家族像に訴えかけた。料理が苦手でも袋を開ければそれなりの食事ができるというメッセージであり、これが当時の共働き家庭が増える流れと正確に合致した。
発売初年度の売上は200億ウォンに達した。餃子はここから「特別な日の料理」から「いつでも食べる日常食」へと位置を変えた。
30年の冷凍餃子帝国はなぜ革新を止めたのか
故郷餃子は、やがて冷凍餃子の普通名詞となった。
1988年、ヘテが配合比率まで公開し、自ら「標準」を名乗ったことが、かえって足かせとなった。標準になった瞬間、あえて変える理由が消えてしまったのだ。
その間、競合他社は時代ごとの隙間を突いた。
1997年のIMF通貨危機の時は、CJ第一製糖の「白雪軍餃子」が春雨を入れてコスパで勝負し、
2002年のウェルビーイングブームに乗っては、プルムウォンの水餃子があっさりとした味わいで地位を確立した。
2008年の金融危機局面では、東遠F&Bが70gの「開城王餃子」で「一食の食事」という新しい用途を切り拓いた。
なぜ挑戦者たちは毎回時代を読めるのに、故郷餃子だけはそのままだったのか。この点が皮肉なところだ。
「標準」という資産は、守るだけでも安全だった。売れる数字が毎年維持されるため、あえてリスクを負って配合を変えたり、新しいラインを敷く誘因がなかったのだ。正確には、変えなくてもいい理由が毎年一つずつ増えていったわけだ。
ザ・スクープが指摘したように、故郷餃子には習慣的に購入する顧客はいたが、熱烈に支持するファンはいなかった。
この格差が、のちに王座を明け渡す決定打となる。
Bibigo王餃子、冷凍餃子の公式を書き換える
2013年、CJ第一製糖が掲げた目標は「もう少し美味しい故郷餃子」ではなかった。
家庭で専門店レベルの料理を再現するという、全く異なるアプローチだった。CJが内部的に整理した方向性は**「より良いものではなく、全く違うもの」**だった。
R&Dは大きく4つの方向に分かれて進められた。
具材をすり潰さず角切りにし、素材の食感と肉汁を生かした。
生地は3,000回以上こね、薄くてもモチモチした皮を実現した。
サイズは従来比2倍以上の35gにして存在感を作り出し、
波模様のひだを付けて、一目で「従来の餃子とは違う代物」という信号を送った。
名前も「王餃子」と新たに付け、故郷餃子との直接比較そのものを避けた。
一つひとつは些細に見えても、4つの要素が重なると、消費者にとっては全く別のカテゴリーの料理のように感じられたはずだ。
1年での王座交代、冷凍餃子市場がひっくり返った3つの理由
Bibigo王餃子は発売から1年で故郷餃子を追い抜き、1位に躍り出た。
新製品が30年続く1位ブランドを覆すのにかかった時間としては、あまりに短い。理由は大きく3つに整理できる。
第一は先ほど述べたファンの格差、いわゆる**「情熱の格差(Passion Gap)」**だ。
故郷餃子には習慣的に買う顧客がいたが、Bibigoには味に惚れ込み、自ら口コミを広げるファンが生まれた。
第二はヘテの対応が遅れた点だ。後続製品がBibigoが作った「プレミアム」の枠内で追随するにとどまり、市場のルールそのものを書き換えることはできず、結局主導権を取り戻せなかった。
第三は意外な経路から来た。Bibigoは韓国よりもアメリカの餃子市場で先に勝負をかけ、25年近く地位を守っていた中国ブランドを追い抜いて1位になった。このニュースは国内消費者に「世界が認めた製品」という認識を植え付け、その認識が価格抵抗をなくす武器となった。
故郷餃子 vs Bibigo王餃子、冷凍餃子スペック比較
数字で整理すると、両ブランドが歩んできた異なる道がより鮮明になる。コンセプトからサイズ、皮の製法まで、重なる項目がほとんどないほどだ。
冷凍餃子市場を分けた両ブランド、スペック比較
| 特徴 | ヘテ 故郷餃子(郷愁の標準) | CJ Bibigo王餃子(プレミアム挑戦者) |
|---|---|---|
| コンセプト | 便利で安い「国民的おやつ」 | 自宅で楽しむプレミアム「専門店料理」 |
| 餃子の具 | 細かく挽いた肉、野菜、春雨 | 角切り肉と野菜で食感と肉汁を強化 |
| サイズ(1個あたり) | 約13g | 約35g |
| 餃子の皮 | 標準的で比較的厚い皮 | 3,000回以上こねた生地で薄くモチモチ |
次の冷凍餃子戦場はどこか
現在、Bibigoは国内冷凍餃子市場で約44%のシェアを維持し、1位を守っている。
朝鮮ビズの報道によると、むしろ2位の座を巡る競争が激化している雰囲気だ。停滞する国内市場に代わり、次の勝負所は4つに見える。
- プレミアムと多角化: シュウマイや点心のように細分化された好みを狙った製品が増えている。単に「もっと美味しい餃子」ではなく「別の種類の餃子」として棚を分ける戦略だ。
- ヴィーガン餃子: 100%植物性材料で作られた製品が、新たな成長軸として浮上した。宗教的な理由や環境問題で肉類を減らす消費者層を真っ向から狙う。
- 異色コラボ: 有名店やウニのような特別な食材を売りにした限定版が話題を集める。販売量より話題性そのものが目的の製品たちだ。
- グローバル展開: 最大の戦場だ。K-フードブームの中、国内市場は今や海外進出のためのテストベッドに近い。国内で先に検証したレシピを海外の口に合わせて変形する順序が定着した。
故郷餃子とBibigoが共に綴った40年近いこの冷凍餃子の歴史は、標準を守ることと、標準に安住することがどれほど異なることかを示している。
今、冷凍庫にある餃子一袋にも、それなりの歴史が積み重なっているということだ。
参考文献
- [食品博物館]①冷凍餃子の元祖、革新を導いたヘテ故郷餃子 — イーデイリー (https://www.edaily.co.kr/News/Read?newsId=01380886622715896&mediaCodeNo=257)
- 故郷餃子CF 餃子パーティー編(1987) — YouTube (https://www.youtube.com/watch?v=JaMTA2AtJgk)
- 冷凍餃子の元祖・故郷餃子、30年間で7億袋販売 — 韓国経済 (https://www.hankyung.com/article/2017102478771)
- 冷凍餃子の反転…現代史と共に変身してきた30余年 — 国民日報 (https://www.kmib.co.kr/article/view.asp?arcid=0924059889)
- アメリカの餃子市場で1位になるためにCJが極めたそれ [#CJオンエア] — YouTube (https://www.youtube.com/watch?v=i3ikhK9ZPlI)
- 冷凍餃子市場レポート 2033年全世界予測 — Business Research Insights (https://www.businessresearchinsights.com/ko/market-reports/frozen-dumplings-market-106981)